キーワード:マルグリュー・ミラー/オイヴィン・ブレッケ/リチャード・バラッタ
全曲試聴: https://open.spotify.com/playlist/2e5VHy0pIskDIWVZ2pbsMJ
1) ①Herzog / Richard Baratta (from『Off The Charts』Savant Records SCD-2210) 6:45
■Jerry Bergonzi(ts) David Kikoski(p,el-p) John Patitucci(b,el-b) Richard Baratta(ds) Paul Rossman(congas,per) 2023.3.14, NJ
半世紀近いニューヨーカー歴を持つドラマー(1950~)が、自身の若き60~70年代に好きになったマッコイ、チック等の楽曲をセレクト。著名ミュージシャンの協力を得て、キャリアを重ねた今だから表現できる作品に取り組んだバラッタの制作コンセプトに共感。ボビー・ハッチャーソン『Total Eclipse』からの①は、チック参加作であることを含めてアグレッシブなバンド・サウンドに転化した成果を評価したい。
2) ⑥Excursions in Blue / Mulgrew Miller (from『Solo in Barcelona』Storyville Records 101-8537) 14:36
■Mulgrew Miller(p) 2004.2.2, Barcelona
ケニー・バロンとのデュオ作『The Art of the Piano Duo – Live』(2005、2011年)が2019年に発掘されたのが記憶に新しいミラー(1955~2013)。2000年代はトリオのライヴ作を連発した時期で、その点で本作の登場は貴重。アメリカン・スタンダードとジャズマン・オリジナルが中心のセットリストにあって、⑥はブルースをテーマに展開したミラーの音楽性が色濃く興味深い。
3) ①Accordion / Yossi Itskovich Octet (from『Times』YoSi Records) 7:13
■Òscar Latorre(tp) Yossi Itskovitch(tb) Sam Barnett, Charlie Rose(sax) Iannis Oboils(p) Fabio Guovea(g) Nadav Erlich(b) Marton Juhasz(ds) Tatiana Nova(vo) (c) 2023
母国イスラエルでクラシック畑にいたトロンボーン奏者はNYに渡り、バリー・ハリスやスライド・ハンプトンを通じてジャズに傾倒。大編成での経験がジャンルの異動にも生かされたようで、全自作7曲はオクテットでの可能性を追求したものであり、ギターを入れて現代性を狙った点が見逃せない。①はホーン・アンサンブルとソロが共に“聴かせる”。
4) ①En La Oscuridad / Miguel Zenón & Luis Perdomo (from『El Arte Del Bolero Volume 2』Miel Music, digital only)
■Miguel Zenón(as) Luis Perdomo(p) 2023.5.16, NY
ラテン・アメリカとボレロから選曲した2020年のデュオ・セッションに、両者が予想以上の手応えを得て翌年作品化。その反響を踏まえたこの第2弾は、アルト&ピアノ・デュオのクオリティとしてはコニッツ&ペトルチアーニ盤を想起させると同時に、ジャズ・ファンには未知の曲を発見できる楽しみも提供。Rafael Solano Sánchez作曲の①は、楽曲が持つ感傷的な味わいと、インティメイトなデュオ・サウンドを表現しているのが好感。
5) ②Point Of View / Øyvind Brække (from『From Now On』 Oslo Session Recordings OSR009) 5:04
■Øyvind Brække(tb) Jørgen Mathisen(ts) Bergmund Waal Skaslien(viola) Jacob Young(g) Bárður Reinert Poulsen(b) Erik Nylander(ds)
トリグヴェ・サイムのECM盤やトロンハイムJOにその名を刻むノルウェーのトロンボーン奏者(1969~)が、同国首都の新興レーベルからの2020年発表オールスター・セクステット・デビュー作の実績を経た第2弾。ピアノレスにヴィオラとギターを加えた編成の意図を探れば、2管とのアンサンブルとコントラストが鮮明な②に、その解答があると納得。
6) ①Shining Star / JM Jazz World Orchestra (from『Jazz Pops / Pop Swings』Planet Arts) 9:06
■JM Jazz World Orchestra, directed by Luis Bonilla © 2023
1945年設立のJMIは若手音楽家のための世界最大級の非営利団体で、2012年発足の楽団は、17ヵ国にわたる18~26歳で構成された若手の登竜門。ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ等の大編成経験があるボニーラが音楽監督を務めるだけあって、クオリティが高い。①はトロンボーンをフィーチャーし、昭和時代から日本人が親しんできたラテン色が、リスナーと楽曲との距離を縮める。