全曲試聴: https://open.spotify.com/playlist/1uJv63ymsETwlNq4quOr6h
テーマ曲:Richard Smith / Bring It In (Innervision Records, single) 4:09
1) ③P. Bouk / The Eric Ineke JazzXpress (from『Swing Street – Plays The Music Of Cannonball Adderley』Timeless Records SJP495) 4:37
■The Eric Ineke (ds) JazzXpress [Nico Schepers (tp) Sjoerd Dijkhuizen (ts) Rob van Bavel (p) Marius Beets (b)] Tineke Postma (as) 2024.6.26, Zeist
“ハードバップは生きている”をモットーとするオランダのベテラン・ドラマー(1947~)によるソングブック。レギュラー・クインテットに、イネケとは2020年発表の『What Kinda Bird Is This?』で共演した日本でも人気のポスマが加わり3管に増強したのは、60年代のキャノンボール・アダレイ・セクステットを意識したからに違いない。ヨゼフ・ラティーフ作曲の③はフロントとドラムをフィーチャーしており、当時の同セクステットの雄姿が重なる。
●BIMHUIS TV | Eric Ineke Jazzexpress feat Tineke Postma | Late Show:

2) ②Hold Up A Minute / Ari Hoenig Trio (from『Tea For Three』Fresh Sound New Talent FSNT691) 6:55
■Ari Hoenig (ds, ⑪:vo) Gadi Lehavi (p) Ben Tiberio (b) 2023.7.28, NY
初リーダー作から四半世紀になるホーニグにとって、2作連続で同じメンバーとのアルバムをレコーディングしたのが初めてとは意外。ホーニグ・トリオのピアニストをニタイ・ハーシュコヴィッツから96年テルアビブ生まれのガディ・レハヴィが引き継いだ流れを踏まえれば、この人事には納得。前作よりもホーニングの自作曲の割合が増えて、全11曲中、8曲を占める点に、トリオが新たなステージに進んだことが明らか。②はホーニグが認めた実力をレハヴィが証明すると同時に、個性的なドラミングでリーダーシップを発揮したトラック。
●Ari Hoenig Trio – Live At Smalls Jazz Club – 05/29/23:

3) ③j’ai / Joe Sanders (from『Parallels』Whirlwind Recordings WR4827CD) 6:24
■Joe Sanders (b,el-b,ds,p,vo,prog) Logan Richardson (①~④:as) Seamus Blake (①~④: ts) Greg Hutchinson (①~④:ds) Jure Pukl (⑥:ts) Elioté Sanders (④:melodica) Taylor Eigsti (⑩:p,key) 2021.10.20, Clermont Ferrand, France (①~④); date unknown, California (⑤~⑩)
2012年のCriss Cross盤でソロ・デビューしたサンダースの第3弾。①~④は2サックス・カルテットによるライヴ、⑤~⑩はゲストを迎えてマルチ・プレイヤーぶりと未来志向を発揮したスタジオ録音というユニークな2本立てに、異なる音楽性を浮き彫りにする企図が伺える。③はオーネット・コールマン由来のスウィンギーなナンバーで、ピアノレスでブレイクをフィーチャーしたのが効果的。

4) ④Dance / Johan Lindvall Trio (from『End』Jazzland Recordings 3779691) 3:53
■Johan Lindvall (p) Adrian Myhr (b) Andreas Skår Winther (ds) 2024.2.26, Oslo
オスロを拠点に活動するスウェーデン人のリンドヴァル(1990~)は、2019年に自己のトリオのデビュー作をリリース。これは3年ぶりの第3弾で、すべてがワン・ワードの全11曲と録音データを記載した、通例は裏ジャケットのデザインを表に配したアートワークがまず目を引く。シンプルなメロディを繰り返すミニマルな楽曲構造が共通の特徴で、ヘルゲ・リエン以降のノルウェーのトリオでは異色と言っていい。④はキース・ジャレット『ビロンギング』を想起させるムードを持つ小品。

5) ⑦Za Górami / Alice Zawadzki from『Za Górami』ECM 2810) 6:41
■Alice Zawadzki (vo,vln) Fred Thomas (p,vielle,ds) Misha Mullov-Abbado (b) 2023.6, Lugano
ハイブリッドな音楽性を兼ね備え、2タイトルを発表しているアングロ・ポーリッシュのアリス・ザワツキ(1985~)にECMが着目したのが見逃せない。いやハイブリッド&マルチだからこそ、アイヒャー好みのECMにステージアップしたのだと思う。本作はポーランドやスペインの伝統曲等を独自にアレンジした全10曲。タイトル曲⑦はポーランドのトラディショナル・ナンバーにザワツキが作詞し、霊的な雰囲気を演出。

6) ⑥Coefusión Monstruosa / Javier Rojo (from『Musica Para Amansar Fieras』 (Fresh Sound New Talent FSNT-693) 7:00
■Javier Rojo (ts) Álvaro Ocón (tp) Fernando Brox (④:fl) Noé Sécula (p) Eliott Knuets (g) Joan Codina (b) Genius Wesley (ds) summer 2024, Basel
スペインで生まれ、マーク・ターナーに師事した、スイス在住のテナー奏者の初リーダー作。2管セクステットを基本とする全10曲はハビエル・ロホがサックスを始めてからの過去5年間を反映したオリジナルで、若者らしいストレート・アヘッドなサウンドが全編を貫いていて痛快。ロホを除く5人が2024年1月発表の『Introducing Noé Sécula』(FSNT)と同じ顔ぶれであることが見逃せず、⑥は特にセクラのソロが光る。
