全曲試聴: https://open.spotify.com/playlist/0tthqMmzBUKUjCxLYbRqyV
テーマ曲: Gratified / Julian Vaughan (Julian Vaughan Music, single) 4:35
1) ①Tykytys / Kaisa’s Machine (from『Moving Parts』Greenleaf Music GRE-CD-1114) 4:50
■Kaisa’s Machine [Kaisa Mäensivu (b) Sasha Berliner (vib) Eden Ladin (p) Max Light (g) Joe Peri (ds)] Melissa Aldana (③:ts) Maja Mannila (⑥:vo) 2024.6.30, 7.1, NY
2015年にフィンランド人ベーシストが結成したカルテットは、2017年にアルバム・デビュー。その後カイサの米国進出に伴ってメンバーと編成を大幅に変更した2023年発表のセクステット作『Taking Shape』で注目したところ、このGreenleaf Music第2弾はテナーが退団したクインテットへとシフト。全7曲すべてをカイサが書いており、①はチック・コリア「カルテットNo.1」を想起させる、シンコペーション多用の曲調に親近感を抱く。
- Kaisa’s Machine | Moving Parts | Album Trailer:

2) ③Old Devil Moon / Ted Rosenthal (from『High Standards』TMR Music) 6:57
■Ted Rosenthal (p) Martin Wind (①②④~⑥⑧:b) Noriko Ueda (③⑦⑨ :b) Tim Horner (①②④~⑥⑧⑨:ds) Quincy Davis (③⑦:ds) summer 2024
1959年生まれのローゼンタールが立案した来年までの発表プロジェクト4部作の第1弾。スタンダード・ナンバー集の企画自体に新鮮味はないが、聴いてビックリ。デビュー時からのウォッチャーとしては、アイデア豊かなアレンジや巧みな引用によって、“古いボトルに新しいワインを入れること”が可能だと、このタイミングで実証したのが価値大。③は原曲とオリジナルの旋律を組み合わせたテーマで始まり、「ノルウェーの森」「トルコ風ブルー・ロンド」「バイ・バイ・ブラックバード」に触れつつ、見事に着地を決める。

3) ⑦Practicing The Unknown / Nicolas Masson (from『Renaissance』ECM 2846). 4:44
■Nicolas Masson (ts,ss) Colin Vallon (p) Patrice Moret (b) Lionel Friedli (ds) 2023.11, Pernes les Fontaines
1972年ジュネーブ生まれのマッソンは、2018年リリース作『Travelers』でECMリーダー・デビュー。20年前に知り合った変わらぬメンバーによるカルテット第2弾は、全11曲中、4人の即興曲④を除いてすべてマッソンのオリジナルで、奥ゆかしい音色のサックスがアルバムのカラーを特徴づけている。⑦はECMのリーダー作では先輩格にあたるヴァロン共々、70年代のキース・ジャレット米国4にも通じるミステリアスな要素が興味を惹く。

4) ②Woken Dream / Simin Tander (from『The Wind』Jazzland Recordings) 5:01
■Simin Tander (vo) Björn Meyer (six string el-b,effects) Harpreet Bansal (vln) Samuel Rohrer (ds,per,electronics) © 2025
2011年にアルバム・デビューしたアフガン系ドイツ人歌手は、自己のルーツを探求する個性派で、German Jazz Prize 2024にノミネート。2020年発表の前作『Unfading』(Jazzhaus)に引き続き、メイヤー&ローラーの2リズムが参加。17~20世紀のアフガンの詩に曲をつけたり、イタリアとスペインのラヴ・ソングやノルウェーの讃美歌をカヴァーするなど、時代と国境を越えた素材をアレンジ。自作の②はベースが通奏低音を担い、タンダーが歌唱表現を展開する自由さがいい。
●Simin Tander “The Wind” Albumtrailer:

5) ③Folded Secret / Sylvie Courvoisier & Mary Halvorson (from『Bone Bells』Pyroclastic Records PR 40) 5:41
■Sylvie Courvoisier (p) Mary Halvorson (g) 2024.5.7, NY
数多くのリーダー作をリリースしている2人は、2017年に初のデュオ作『Crop Circles』を世に問い、2021年の『Searching for the Disappeared Hour』を経て、この第3弾に至った。2022年度ピューリッツァー賞受賞作からアルバム名をとったプログラムは、それぞれが4曲ずつ提供。ハルヴォーソン作曲の③は、前半はギターの反復音に対してプリペアード・ピアノが主張し、後半は役割が交代してメロディアスなギターを聴かせる構成がユニーク。

6) ①Instant Composure / The Empress (from『Square One』Cellar Live CM052524) 6:10
■Pureum Jin, Erena Terakubo (as) Chelsea Baratz (ts) Lauren Sevian (bs) Steve Ash (p) Joey Ranieri (b) Pete Van Nostrand (ds) 2024.4.11,12, NJ
ピュアム・ジンが結成した、寺久保エレナを含む女性サックス4名によるユニットのデビュー作で、録音はヴァン・ゲルダー・スタジオ。2010年代初頭にジンが唯一の女性メンバーだった、ドイツ人マイケル・ルツァイヤー(bs)のスーパーサックス・コリアが、ユニット・コンセプトの原型だったという。エリントン、モンク、マイルス等の名曲が中心の全11曲にあって、ルツァイヤー作曲の①はジェローム・カーンの「歌こそは君」をベースにした曲調で、ソロ・リレーとバトルを組み合わせた構成がバップ・スピリットを全開にする。
●The Empress | Square One EPK:
