全曲試聴:https://open.spotify.com/playlist/0olhK7lTf41GNhxzkOEqhd
テーマ曲:①Thrill Ride / Ragan Whiteside (from『Thrill Ride』Randis Music) 4:12
1) ③Low Glow / Ant Law & Alex Hitchcock (from 『Same Moon In The Same World』 Outside in Music 2223) 6:03
■Ant Law(g) Alex Hitchcock(ts) Joel Ross(vib) Shai Maestro(p) Linda May Han Oh, Ben Williams, Jasper Høiby(b) Jeff Ballard, Kendrick Scott, Sun-Mi Hong and Eric Harland(ds) 2020-21
共に30代だと思われる英国の2人による、初めての共同名義作。欧米の著名実力者にデモテープを送り共演の賛同を得て、リモートでの制作方法と、村上春樹著『スプートニクの恋人』の文章から拝借したアルバム名のニュアンスが重なる。テナー&ギターをサウンドの中軸に据えた音作りにあって、③はシャイ・マエストロがフィーチャーされたバンド感も申し分ないトラック。
●Alex Hitchcock, Ant Law, Linda Oh, Eric Harland – “Outliers”:

2) ②Willow’s Song / Michael Wollny Trio (from『Ghosts』ACT 9956-2) 4:20
■Michael Wollny(p) Tim Lefebvre(b) Eric Schaefer(ds) 2022.6.17,18, Hamburg
ACTの総帥シギ・ロッホの肝煎りで順調にサクセス・ストーリーを歩んでいるドイツ新世代俊英のトリオ新作は、忘れ去られた幽霊のような音を呼び覚ますことをテーマに、ヴォルニーの自作、ガーシュウィン、エリントン、トラディショナル、シューベルト等の多種多様な選曲を、アルバム・コンセプトに沿って落とし込んでいる。②は英国のホラー映画『ウィッカーマン』の挿入曲で、美旋律とローファイ+少しの電化な音作りにポリシーが伺える。

3) ⑭Love In Outer Space / Sascha Ley (from『In Between』Jazz Haus Musik JHM292) 5:02
■Sascha Ley(vo,p,micro-syn,gadgets) Jean Pascal Boffo(⑩⑫⑬⑮⑰:live sound processing) © 2022
2016年にルクセンブルクのジャズ祭で観たサーシャ&ローラン・ピフェ(b)は、2019年に『It’s Alright To Be Everywhere』を発表。本作は彼女にとって初のソロ・パフォーマンスで、歌手、俳優、ソングライターとしての才能を1~3分台が多数を占める全17曲で披露。生と死、愛と欲望など個人的な素材を元に、実験的な楽曲も点在する中、⑭は多重録音による歌詞世界を個性的に描き出している。

4) ④Four (Affirmation Part I) / Arild Andersen Group (from『Affirmation』ECM 2763) 8:22
■Marius Neset(ts) Helge Lien(p) Arild Andersen(b) Håkon Mjåset Johansen(ds) 2021.11, Oslo
2019年にレギュラー・ドラマーのパオロ・ヴィナッチャが逝去したため、アンデルセンにとってはバンドの再構築が急務だったのではないだろうか。親子ほどの年齢差がある母国ノルウェーの実力派3人とのお披露目作は、7つの組曲+最終曲の構成で、内省的なコンポジションに比重を置いた印象。④はバンドの微細な動きが、やがて集団即興演奏になるスリリングなトラック。

5) ⑯Contemplation / Tyshawn Sorey (from『The Off-Off Broadway Guide To Synergism』Pi Recordings PI96) 11:41
■Greg Osby(as) Aaron Diehl(p) Russell Hall(b) Tyshawn Sorey(ds) 2022.3, NYC
自己のトリオにオズビーを迎えて、“ジャズ・ギャラリー”に出演した5日間の音源からの全19曲の3枚組。フリー系での実績が厚いソーリーは「枯葉」等を含む2022年トリオ作『Mesmerism』を本作への布石としており、アメリカン・スタンダード&ジャズ・ナンバーの料理さばきが聴きどころ。『The Real McCoy』からの⑯は作曲者マッコイ・タイナーばかりでなく、エルヴィン・ジョーンズへのオマージュでもあるモーダルなナンバー。

6) ⑨Maternity Suite / Hedvig Mollestad & Trondheim Jazz Orchestra (from『Maternity Beat』Rune Grammofon RCD 2228) 9:42
■Hedvig Mollestad Thomassen (g) Trondheim Jazz Orchestra[Thomas Johansson(tp) Martin Myhre Olsen(bs,as,ss) Petter Kraft(ts) Trine Knutsen(fl) Ståle Storløkken(org, el-p,syn) Adrian Løseth Waade(vln) Ellen Brekken(b) Torstein Lufthus(ds) Ingvald André Vassbø(per) Ingebjørg Loe Bjørnstad, Mai Elise Solberg(vo) Erlend Skomsvoll(cond)] 2021.10
斬新な音楽性によって母国ノルウェーで高い評価を受けるモレスタが、《モルデ・ジャズ祭》の委嘱を受けて作曲し、2度のライヴを経たスタジオ録音。キャリア最大の編成と初のヴォーカリスト起用、作編曲と、意欲的姿勢が満点で、テクニシャン揃いのTJOとの協調関係も良好。⑨はギタリストとしてジョン・マクラフリンからの影響が感じられる、ロック色の濃い最終曲。
