全曲試聴: https://open.spotify.com/playlist/7LaFm9JUfjEyEYEtB1JGxA
テーマ曲:Spyro Gyra / 50/50 (Amherst, single)
1) ④Quiso / Stan Getz (from『Copenhagen 1977』SteepleChase SCCD-31960) 6:24
■Stan Getz (ts) Joanne Brackeen (p,el-p) Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) Billy Hart (ds) 1977.1.31, Copenhagen
ジョアン・ブラッキーンが参加した唯一のゲッツ盤である『Live At Montmartre』(1月28~30日)の翌日に、同じメンバーがスタジオ入りした未発表作。同作の未収録曲が4曲含まれているのが見逃せず、マーサー・エリントン、ベニー・ゴルソン、チック・コリアら、全曲ジャズマン・オリジナルである点が興味をひく。作曲者のケニー・ホイーラーの76年作収録曲④を早くも採用し、スピード感あるトラックに仕上げている。
2) ②Helt / Blåly (from『Nystalgi』April Records APR128CD) 4:12
■Barbara Fiig (p) Johan Kjær Houver (b) Timon Matern (ds) 2022.10.29-30, 2024.2.29-3.3, Denmark
デンマークのクラシック音楽院の教育プログラムで出会った3名によるデビュー作。全11曲はすべて彼らの共作で、うち9曲が2~3分台なのが特徴。ソロ・リレーにたっぷりと時間を充てるのではなく、短い中に物語を凝縮した趣。リーダーのバーバラが技巧派ではない分、メランコリックでフォーキーなサウンドは一般層へのアピールが期待できよう。②はピアノを軸にしたナチュラルでオーガニックな志向が親しみやすい。
3) ⑦1989 / Ross McHenry (from『Waves』Earshift Music EAR084) 6:40
■Adam O’Farrill (tp) Donny McCaslin (ts) Matthew Sheens (p) Ross McHenry (el-b) Ben Monder (g) Eric Harland (ds) 2020.1, NYC
オーストラリア出身のベーシストによる4年ぶりのリーダー第5弾。前作から連続参加のハーランドの他、著名ニューヨーカーが7曲すべてがマクヘンリーの自作の本作に協力した事実は要注目。盟友と言える同国人シーンズが随所で好演しているのも特筆もの。最終曲⑦はピアノが口火を切って、徐々にバンド・サウンドを形成するプロセスに聴き応えがある。
4) ⑤Garden On The Roof / Hildegunn Øiseth Quartet (from『Garden On The Roof』Clap Your Hands CYH0011) 4:35 4:46
■Hildegunn Øiseth (tp,goat horn,vo) Espen Berg (p) Magne Thormodsæter (b) Per Oddvar Johansen (ds) Niels Olav Johansen (④⑤⑥:g) 2023.7, Oslo
近年はセシリア・ノービー“シスターズ・イン・ジャズ”等、音楽性を拡大する活動が好感を呼んでいるノルウェーのオイセス(1966~)は、角笛も主楽器とする点でカール・セグレムの後継者と言えるプレイヤー。南アフリカやパキスタンでの体験によって母国の伝統音楽を再認識~吸収し、自己の音楽性を築いており、ヤン・エリック・コングスハウグの助言で結成したカルテットの第5弾でもその方向性は継続。「アフロ・ブルー」を想起させる②等の一方、⑤は前半をピアノがリードし、後半のトランペット・ソロが終盤でピアノとの幸福な合体に至るのが秀逸。
5) ③Clay / Arashi with Takeo Moriyama (from『Tokuzo』Trost TR248) 15:40
■Arashi [Akira Sakata (vo,Bb-cl,as) Johan Berthling (b) Paal Nilssen-Love (ds, per)] Takeo Moriyama (ds) 2019.2.18, Tokuzo, Nagoya
北欧との関係も深めている坂田+スウェーデンのベルトリング+ノルウェーのニルセン=ラヴのトリオは、2013年の《モルデ・ジャズ祭》でデビュー。5年ぶり、5枚目の本作は名古屋“得三”でのライヴで、地元の森山が加わったのが見逃せない。③は74年の《メールス》ライヴ盤から50年のタイミングで世に出たことが感慨深く、北欧勢も巻き込んで楽曲が生き続けているのが痛快だ。
6) ⑤Harbour / Christine Jensen Jazz Orchestra (from『Harbour』Justin Time JTR-86422-2) 11:32
■Ingrid Jensen (tp) Jocelyn Couture, Bill Mahar, Dave Mossing, Lex French (tp,flh) Dave Martin, Taylor Donaldson, Dave Grott (tb) Jean-Sébastien Vachon (btb) Christine Jensen (ss,cond) Claire Devlin (ts,b-cl) Chet Doxas (ts,cl) Erik Hove (as,fl) Donny Kennedy (as,ss) Samuel Blais (bs,b-cl) Gary Versace (p) Steve Raegele (g) Rémi-Jean LeBlanc (b) Jon Wikan (ds) Montreal (c) 2024
新譜で試聴し、好印象を抱いた前作『Habitat』から11年。この間の2017年には仏ONJとの共演作を発表し、ビッグ・バンド・リーダーとしてのキャリアを高めてきたクリスティンが、モントリオールを拠点とする楽団員に加えて、ヴェルセイス、ドクサスらのニューヨーカーも迎えた新作。⑤はマリア・シュナイダー以降の大編成サウンドの成果を共有しつつ、ケネディのソロを経て4歳年長の姉イングリッドをフィーチャーし、着地点へと到達する。