1930年代から米カンザスシティを拠点に、自己のコンボやビッグ・バンドで活躍したピアニスト、ジェイ・マクシャン（1916～2006）。89年8月の《Newport Jazz Festival in 斑尾》での初来日から1年も経たないタイミングだった90年4月に東京のライヴ・レストランIndigo Blues at the ACTに、トリオで4日間出演した。本作『ライヴ・イン・トーキョー1990』はそのうちの一夜の音源を、マクシャンの遺族の了承と協力を得た上でCD化した、世界初登場のアルバムとなる。

プログラムはジョージ＆アイラ・ガーシュウィンの「バット・ノット・フォー・ミー」を皮切りに、デューク・エリントンの「イン・ア・センチメンタル・ムード」、30年代から40年代にマクシャンが起用したチャーリー・パーカーとの共作「ジャンピン・ザ・ブルース」、所縁のあるカウント・ベイシー楽団のレパートリーとして知られる「キュート」等の全9曲。ミュージカルからの「オン・ア・クリア・デイ」「オール・オブ・ミー」、ホーギー・カーマイケルの「ジョージア・オン・マイ・マインド」では、当時74歳だったとは思えない若々しい歌声を聴かせる。

本作は没後13年を数えるピアノ・スタイリストの偉業を再認識する、良いきっかけとなることだろう。