ピアニスト、ハクエイ・キムのメジャー通算7枚目となる新作『トレース(痕跡) – ピアノ即興作品集』が完成した。ハクエイはこれまでに自作曲「ウィンター・フェスティヴァル」、オーストラリア時代の恩師に捧げた「マイク・ノック」、スタンダード曲「枯葉」等を収めた『ブレイク・ジ・アイス』(2011年)と、15曲中9曲の自作を柱に、「テイク・ファイヴ」「ムーン・リヴァー」等のカヴァー曲も採用した『レゾナンス』(2018年)の、ソロ2タイトルをリリースしている。
新作は完全即興演奏のライヴ・パフォーマンスを収録した内容であり、前述の過去2作にも収録した即興曲の世界をアルバム全体へと拡大したコンセプト作と言えよう。
日常的なライヴ活動の中で、最近は毎月2回のペースでジャズ・クラブにソロで出演しているハクエイは、この編成を自身が注力するジャンルだと位置づけており、そのために録音場所として東京・尾山台Flussが選ばれた。ドイツ語で「川、流れ」を意味する言葉を名づけられた同所は、3メートル以上の天井高があり、着席で40名を収容できる開放的な空間。「時間の流れや人の巡り合わせ、幾重の流れを大事に汲みながら、小さな変化に耳を傾ける音楽の場所を育てている」という同所のポリシーが、ハクエイの繊細な表現を捉えた作品に仕上がっている。
本作を完成させたハクエイは以下のように語った。
「あの日に言いたかった事はすべて言えたと思うし、一発勝負となるオール・インプロヴィゼーションのコンサートにおいて、演奏、楽器、調律、録音、そして観客の存在感というすべての歯車が噛み合って、一つの作品に昇華しました。あの日を人々と共有できることはとても感慨深いです」。
【作品情報】
『トレース (痕跡) – ピアノ即興作品集』ハクエイ・キム
TRACES – Improvised Piano Works / Hakuei Kim
UCCJ-2179 \3,300 (tax in) Verve/Universal Music 2020.6. 3 ON SALE
- イースト・サイド・ギャラリー East Side Gallery 7:10
- イン・ザ・ストーム In The Storm 7:43
- ブルース・イン・ザ・ノース Blues In The North 8:21
- シグナルズ Signals 11:21
- ダンシング・スノー Dancing Snow 10:00
- エンプティ・エアポート Empty Airport 5:42
- エンジェルズ・トレース Angel’s Trace 10:46
- パープル・スカイ Purple Sky 11:12
- ファインディング・ライツ Finding Lights 6:49
All Songs Composed by Hakuei Kim
ハクエイ・キム: piano ★2019年10 月14 日、東京、尾山台、Flussにてライヴ録音
Produced by Hideo Tsuji
Recording, Mixing and Mastering Engineer: Akira Kato (Taiyou Club Recordings) Assistant Recording Engineer: Reiko Ikeda (Taiyou Club Recordings)
Mixed and Mastered at Studio Taiyou Club, with Solar Mastering System
Piano: YAMAHA S4 Piano Technician: Hideo Tsuji
■ハクエイ・キム バイオグラフィー
1975年京都市に生まれ札幌市で育つ。韓日クォーター。5歳からピアノを始める。オーストラリア、シドニー大学音楽院(ジャズ科ピアノ専攻)卒業。
2005年 DIWより「Open the Green Door」でインディーズ・デビュー。その後、同レーベルより3枚のアルバムをリリース。2009年 ピアノ・トリオ「Trisonique/トライソニーク」を杉本智和(b)、大槻”KALTA”英宣(ds)と結成 2010年。渡辺貞夫の『Sadao with Young Lions』のツアーに参加。2011年 ユニバーサル ミュージックよりアルバム『Trisonique』でメジャー・デビュー。2012年 ソロ・ピアノ・アルバム『Break the Ice』、DVD『Solo Concerts』リリース。2013年 アルバム『A Borderless Hour』リリース。2015年 韓国伝統音楽ユニットの新韓楽とトライソニークとのコラボレーション・アルバム『HANA』 をリリース。2018年に約6年振りとなるソロ・ピアノ・アルバム『Resonance』をリリース。2019年 フランスを代表するパーカッション奏者、グザヴィエ・デサンドル・ナヴァルとのパリ公演を 収めた『Conversations in Paris』を発表。
これまでに、札幌シティ・ジャズ・フェスティヴァル、香港インターナショナル・ジャズ・フェスティヴァル、韓国・光州ワールド・ミュージック・フェスティヴァル等に出演。2016年にはトライソニークで米国デトロイト・インターナショナル・ジャズ・フェスティヴァルに出演。現地オーディエンスやメディア から高評価を受ける。2018年には初のヨーロッパ・ツアーを敢行し、フランス、イタリア、ドイツでの公演を成功させた。
その他の活動としては、TV東京全国ネット『美の巨人たち』のエンディング・テーマや日韓合作映画『道〜白磁の人〜』(高橋伴明監督作品) のエンディング・テーマの作曲、TV朝日系列全国ネット『越路吹雪物語』で大地真央が歌う主題歌の編曲、クリスタル・ケイ、新妻聖子、綾戸智恵、平賀マリカ、平方元基、川島ケイジ等のレコーディングや編曲、コンサートでの音楽監督等がある。現在、国内外を問わず活動中