近年は小編成のアルバムを通じて自己の世界を発信しているピアニストのハクエイ・キムが、東京・丸の内コットンクラブに2つのプロジェクトで出演することが決まった。
9月9日にはハクエイがリーダーのトライソニークが登場。2009年に杉本智和(b)、大槻“KALTA”英宣(ds)と結成したトリオは、30回を超えるライヴを通じて音楽コンセプトを高め、2011年にアルバム・デビューを果たす。アコースティック・トリオとして出発した彼らは、2013年の第2弾『ボーダレス・アワー』で電気楽器やエフェクターを導入して、音楽性を拡張。さらに2015年の『HANA』では韓国の伝統音楽に由来するユニット“新韓楽”とのコラボレーションを実現。その後もエレクトリック・サウンドを打ち出したライヴ活動を続けている。2016年《デトロイト・ジャズ祭》のステージは大きな反響を呼んだ。これまで東京ではビルボードライブ東京や新宿・ピットインで印象的なパフォーマンスを繰り広げてきたトライソニークが、初出演となるコットンクラブで最新の進化形を披露してくれることだろう。
トライソニークから2ヵ月後の11月27日にはソロ・ステージを控える。これは今年6月にリリースされた『トレース(痕跡)ピアノ即興作品集』の記念ツアーの最終公演として行われるもの。2011年の初ソロ作『ブレイク・ジ・アイス』でスタンダード、ロック、即興演奏を収録し、2018年の『レゾナンス』では自作曲を中心にスタンダードとジャズ・ナンバーで構成。これら2作品の成果を踏まえて、全編即興演奏でレコーディングに臨んだのが最新作である。当初はアルバム化を目的としたのではなく、その前段階の記録として録音したところ、出来が良かったために発売されたという裏話は、現在のハクエイが即興演奏家として充実した時期にあることを物語っており、本公演にも期待が寄せられる。