米ニューヨーク・ジャズ・シーンの一大拠点を担うジャズ・アット・リンカーン・センターが運営するジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ(JLCO)が、1988年の創立から30周年を迎えて、新たなプロジェクトを発表した。これはJLCOの芸術監督を務めるウィントン・マルサリス(tp)が作曲したJLC委嘱の新作『エヴァー・フォンキー・ロウダウン』(The Ever Fonky Lowdown)で、世界初演となる。
人種問題をテーマにした同作はダグ・ワンブル(g)、ヴォーカル・トリオ(カミル・サーマン、ブリアンナ・トーマス、ジャズメイア・ホーン)がJLCOに加わり、俳優ウェンデル・ピアースがナレーターを、ウィントンと共演歴があるダンサーのジャード・グライムズがダンサー3名のための新たな振り付けを担当。6月7日から9日にJLCのローズ・シアターで開催される。
ウィントンはこれまでに、グラミー賞受賞作『ブラック・コーズ』(86年)、ジャズ・ミュージシャンとして初めてピューリッツァ賞に輝いた3枚組大作『ブラッド・オン・ザ・フィールズ』(97年)、クインテット+ヴォーカルの『自由への誓い』(=『From the Plantation To The Penitentiary』、2007年)と、10年ごとに人種問題を創作のインスピレーションにしており、未だに解決することのない案件に取り組んで芸術作品に仕上げた成果が注目される。
JLCOはリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラの名称でスタートし、91年にウィントンが芸術監督に就任してからは、ジャズ史の偉大な遺産を伝承・再評価する活動に注力。2010年JLCOに改称し、2015年以降は自主レーベルBlue Engineからアルバムがリリースされている。