ピアニストの小林洋子とドラマーの池長一美がユニットThe Third Tribe名義のデビュー作『Nearly Dusk』をリリースした。二人は約30年前に出会って以降、たびたび共演してきたが、レギュラー・ユニットの形としては昨年結成した本作が初めてだ。
トリオの経験が豊富な二人が、池長の提案によってデュオを組んだのが興味深い。デュオには同一楽器やピアノ&ギター(ビル・エヴァンス&ジム・ホール)、サックス&ピアノ(ウェイン・ショーター&ハービー・ハンコック)等、様々な組み合わせがある。ピアノ&ドラムと言うと、ダラー・ブランド&マックス・ローチが有名だが、デュオの世界ではそれほど一般的ではない。
「池長さんの音楽、その存在がなければ、いまだに音楽とは遠く離れ、殻に閉じこもっていたかもしれない」と語る小林と、「その明確なイメージ故に、共演者は迷うことなく演奏に没頭していくことができる」と小林を評する池長。お互いを敬愛するコメントを踏まえると、楽器の組み合わせが少数派であることとは関係なく、音楽家ばかりでなく人間として信頼関係を築いていることが本デュオを成立させている土台なのだと感じさせる。
<アルバムPV>
池長一美からファンの方へのメッセージ
2年前に始まった母の介護がようやく落ち着いてきた頃に、ピアニスト作曲家の小林洋子さんからお電話をいただき、レコーディングを見据え共に活動したいという依頼をいただきました。
小林さんもほぼ同時期に闘病されていたことをその時初めて知りました。15年前にトリオで活動した時期もありましたが、当時から大尊敬していたアーティストだったので、嬉しかったのは勿論、あまりのタイミングに運命というか、これは特別なことだと感じました。
その後3回のライブを経て昨年12月にレコーディング、東京下北沢にあるライブハウスを半日貸し切っての録音。タイムマシンレコードの五島昭彦氏によるマイク2本でのシンプル録音でした。
基本即興的要素は強いと思いますが、その表現を成就する為に一曲一曲に両者で想いを共有し、それぞれの役割を明確にしました。リハーサルに時間を使った甲斐あって、収録されたテイクはどれもそれぞれの世界があって選ぶのに大変苦労しました。まさにうれしい悲鳴です。
初めてのデュオによる都内でのライブでは僕の予想通り素晴らしいステージになりました。お互いトリオやグループでの編成を長くやってきたので、DUOを僕が提案した時に小林さんには少し不安もあった(かもしれません)。でも、長きにわたり音楽を続けてきた我々にしか出来ないモノを作りたい、常に新鮮に向き合いたいという気持ちには一寸の迷いもブレもありませんでした。とは良いつつ、結構楽しんじゃってますが、、。
毎回のライブで、あ、み〜つけた!!みたいにして、新しいヴォキャブラリーを発見し、また暫くしたらそれに安住するのではなく、更地にしてまた耕す。音楽は新鮮じゃないといけないと思うんです、演奏している人が本当にその瞬間を楽しんでいないと。だから、驚きだったり、最初ダメでも後半盛り返してひっくり返したり、みたいなのがドラマチックでストーリーを感じる。
The Third Tribe(第3の種族)の言葉や文化を作るべく、活動しています。
作品情報
アルバム名:Nearly Dusk
アーティスト名:The Third Tribe
曲目:①Waltz for Mars ②風薫る ③Playground ④Mrs.Hummingbird ⑤木の芽時の ⑥plastic moon ⑦Wind Song ⑧Danny Boy ⑨Bonne yeah rit…..。
①~⑤⑨:composed by Yoko Kobayashi
⑥⑦:composed by Kazumi Ikenaga
⑧:Irish Traditional
2018年12月13日、東京・下北沢Half Moon Hallにて録音
品番:TIMEMACHINE RECORD TMCD-1014
Live Information
◆2019.06.16(sun.) 新宿ピットイン
open 14:00 start 14:30
¥2,500(1drink付)
◆2019.07.21(sun.) 横浜エアジン
open 15:00 start 15:30
¥2,500+drink(¥500~)
◆2019.08.17(sat.) 中野Sweet Rain
open 19:00 start 20:00
¥2,500+order
The Third Tribe メンバー・プロフィール
■ピアノ 小林洋子
4歳の頃よりピアノを始め、東京音楽大学ピアノ科にて、鈴木泰代氏、弘中孝氏に師事。指揮法を山本直純氏、森正氏に師事し、作曲家・三枝成彰氏のアンサンブルレッスンの専属ピアニストを務め、音楽表現の幅を広げることとなる。在学中よりJAZZ即興、作曲に興味を持つ。
卒業後、ジャズピアノを辛島文雄氏に師事し、その頃より自己のTRIOを結成、オリジナル曲を中心に活動を開始する。当時、渋谷毅オーケストラ、じゃがたら、生活向上委員会大管弦楽団などで活躍中の吉田哲治氏(tp)率いるカルテット、FIVESに参加.共演ミュージシャンは、古澤良治郎、外山明、村上ポンタ秀一、吉野弘志、早川岳晴、山元恭介、向井滋春、石渡明廣etc.、今泉裕(ss)グループ(永田利樹cb.)にも参加。
2001年、ピアノ・トリオによるリーダーアルバム「LITTLE THINGS」[吉野弘志(cb)堀越彰(ds)]をリリース。
2005年に鈴木徹大氏(gt)とのDUO:B・B・STREEPにて「LITTLE THINGS Ⅱ」を発表。
2008年より同DUO を軸としてトリオ・カルテット、クインテットでの活動も始動。
著書に「クラシック・イン・ジャズ」2巻・3巻(共著)、「コンテンポラリー・ジャズピアノ」3巻(共に中央アート出版)にも協力している。
2012年末、難病「音楽家のジストニア」と診断されるも、2018年7月ライブ復帰を果たす。The Third Tribe 始動に至る。
■ドラムス 池長一美
京都市出身 12歳のとき独学でピアノ、ドラムスを始める。
1986年 上京後、鈴木勲、金井英人他のグループで活動。
1989年 バークリー音楽大学の奨学生として渡米。ジョー・ハント氏に師事、ボストンを中心に演奏活動。
1991年 合衆国政府より滞在芸術家としてアイオワ州ルーサー大学のジャズ科講師に迎えられ演奏、講演活動を続ける。
1995年 帰国後も国内外で活動を続け北欧、ヨーロッパ、アジア、全米各地のジャズ・フェスティバルなどに多数出演。
過去の共演者:バート・シーガー、マグナス・ヨルト、クリスチャン・ヴースト、ニコライ・ヘス、ヤコブ・ディネセン、ジョージ・ガゾーン、鈴木康充、中牟礼貞則、渡辺香津美、山口真文、難波弘之、青柳誠、石井彰、高田ひろ子、アキコ・グレース、松永貴志、ハクエイ・キム、西山瞳、黒田月水ほか。参加CDは40作品以上。
近年は自己のオリジナル曲を核とし様々なフォーマットで精力的に活動中。
2002年より洗足学園大学のジャズ科講師として後進の指導にあたる。