1970年代からフュージョン界のトップ・ミュージシャンとして活躍してきたボブ・ジェームス(p,key)とデヴィッド・サンボーン(as)は、86年に双頭名義作『ダブル・ヴィジョン』(Warner Bros)をリリース。同作の参加者で2曲を提供したマーカス・ミラー(el-b)を加えた3人看板のリユニオンによる全米ツアー「Double Vision Revisited」のスケジュールが発表された。8月3日の米ワシントン州ウッディンビル公演を皮切りに、9月29日《モントレー・ジャズ祭》を含め、11月9日までの全26公演となっている。ダブル・ヴィジョン・リヴィジテッド・バンドのメンバーは上記3名にビリー・キルソン(ds)、ラリー・ブラッグス(guest vo)が加わった5名。

『ダブル・ヴィジョン』はジェームスのWarner移籍によってサンボーンとレーベル・メイトになったことで実現。ジェームスにとって人気アーティストとのダブル・リーダー作としては、アール・クルー(ac-g)との『ワン・オン・ワン』（79年）の実績があり、それに続く成果となった。3人の関係の基盤と言えるのがサンボーンとマーカスの間柄だ。79年のサンボーン作『ハイダウェイ』にマーカスが1曲で参加したことをきっかけに、マーカスが自作3曲とサンボーンとの共作1曲を提供した『夢魔』（81年）、マーカス作の3曲を収めた『アズ・ウィ・スピーク』（82年）、マーカスが初めてプロデューサーとしても参画した『バックストリート』（83年）、スラップ・ベースが冴えわたるサンボーン初のスタジオ・ライヴ作『ストレート・トゥ・ザ・ハート』（84年）と、作品ごとに両者は関係を深めていた。『ダブル・ヴィジョン』はこのような流れの中で、サンボーンのレコーディング・キャリアの記念碑となる87年作『ア・チェンジ・オブ・ハート』の直前に制作された。以上を踏まえれば、ジェームス＆サンボーンにマーカスが加わったことで、このツアーの価値が高まったことは間違いない。

『ダブル・ヴィジョン』は米Billboardのアルバム・チャートで、64週間にわたりトップ200にチャート・インするロングセラーを記録。しかしスケジュールの都合でリリース記念のツアーは行われず、再共演作が制作されることもないまま20年以上が過ぎた。ジェームスとサンボーンの共演が思いがけず実現したのは、《東京JAZZ 2008》のステージ。サンボーンは自身のバンドで、ジェームスはフォープレイで出演し、最終日の最終セット「東京JAZZ SUPER JAM featuring フォープレイand デヴィッド・サンボーン」で2人の共演がセッティングされたのである。歴史的な1曲となったのは、マーカス・ミラーが作曲した同作の1曲目「マプート」。サンボーンのアルトからテーマ・メロディが発せられた瞬間、会場に包まれた幸福感が今も鮮やかに甦ってくるほど、感動的なシーンであった。

ジェームスとサンボーンは2013年春に2枚目の共同名義作『カルテット・ヒューマン』(Okeh)をリリースすると、同年9月にレコーディング・メンバーで《東京JAZZ》に出演。5年前に見せてくれた短い夢のひとときを、フル・セットで披露してくれたのだった。

今回の再会ツアーを記念して、『ダブル・ヴィジョン』の高音質CDとLPの発売が決定した。オリジナルのアナログ・マスターテープからの最新リマスタリング音源による、24Karat Gold MQA CD（3000枚限定、スリップケース、シリアルナンバー入り）と180g重量盤LPになる（Evo Sound）。