1940年代にNYで自己のユニットを率い、音楽理論を研究。50年代に音楽学校を開設し、リー・コニッツ(as)、ウォーン・マーシュ(ts)、ビリー・バウアー(g)ら著名な門下生を輩出してトリスターノ・スクール=クール派と呼ばれるモダン・ジャズの一つのスタイルを築いたピアニスト、レニー・トリスターノ(1919~78)の未発表作品である『The Duo Sessions』が、NYに拠点を置くDot Time Recordsからリリースされた。これは2015年にレーベル内で始まり、ルイ・アームストロング(tp,vo)、ベン・ウエブスター(ts)、エラ・フィッツジェラルド(vo)等の12タイトルを世に出してきた“Legends Series”の最新作。トリスターノの誕生日に合わせた、3月19日の発売となった。
アルバムの内容はタイトルが示すように3組のデュオを収めたもの。曲順で言うと、①~⑥はレニー・ポプキン(ts)との70年録音。⑦⑧はコニー・クローザース(p)との76年録音で、トリスターノが残したピアニストとのデュオとしては初公開の音源。⑨~⑯はロジャー・マンキューソ(ds)との67~68年録音だ。これまでにアルバム化されたトリスターノのディスコグラフィーに当てはめると、67、68、70、76年の音源は本作が初登場であり、しかも76年の2曲は他界2年前にあたる最も晩年に近い録音として価値がある。
ポプキンとクローザースは79年にNYタウン・ホールで開催された『レニー・トリスターノ・メモリアル・コンサート』でコラボレートし、80~90年代はカルテットを共同運営した間柄で、『Jazz Spring』(93年、New Artists) 等をリリース。ポプキンはトリスターノの音楽遺産を作品化するレーベルJazz Recordsのプロデューサーとして、『Wow』『Live At Birdland 1949』を手掛けた。マンキューソはクローザースの初リーダー作『Perception』(75年、SteepleChase)で助演して以降、2000年代の作品までたびたび共演関係を続けている。
約20年間にわたるリーダー・セッションのレコーディング・キャリアにおいて、ソロからセクステットまでの編成を中心としたトリスターノは、これまでデュオの作品を発表していなかった。昨年、生誕100周年の節目を迎えた天才的なイノヴェイターの、没後42年のタイミングで世に出た貴重な発掘作である。