ピアノの巨星、ビル・エヴァンスが1980年9月15日に51歳で逝去してから40年。このタイミングで、エヴァンスの未発表作のリリースが明らかになった。『Live At Ronnie Scott’s』(Resonance)は短期間の活動に終わったエディ・ゴメス(b)、ジャック・ディジョネット(ds)とのトリオが、68年7月にロンドンの名店で4週間の連続公演を行った時の模様を収めたライヴ作。アメリカではブラック・フライデーに合わせて開催されるレコード・ストア・デイにあたる11月27日に2枚組LPで発売され、追って12月4日にCDとデジタルでもリリースされる。
エヴァンスは結成から間もないゴメス+ディジョネットとのトリオを率いて、68年6月に渡欧し、15日にスイス《モントルー・ジャズ祭》に出演。そのステージは『At The Montreux Jazz Festival』(Verve)でアルバム化され、生前のエヴァンスにとってはこのトリオの唯一の公式作となった。同作で大きな成果を挙げたトリオは20日に、ドイツ・フィリンゲンのMPSスタジオでレコーディング。さらに22日にはオランダ・ヒルフェルスムのラジオ局でのスタジオ・ライヴに臨んだ。これら二つの未発表音源は近年、前者が『Some Other Time』で、後者が『Another Time』(以上Resonance)でアルバム化されている。
●『Some Other Time』試聴:
https://open.spotify.com/album/7BS0CgkIQL4vSGJntbwx1M
●『Another Time』試聴:
https://open.spotify.com/album/5Mb1e38JMVUFpDo3JKhcHN
本作はディジョネット所有の音源から全20曲を収録しており、うち『At The Montreux Jazz Festival』(10曲収録)と重複するのは5曲にとどまる。このロニー・スコッツ出演時にはマイルス・デイヴィスが来店し、ディジョネットを自分のバンドに引き抜いたというエピソードがあって、マイルスを魅了したドラム演奏も興味をひく。
ブックレットは69年のマイルス・バンドのメンバーだったディジョネットとチック・コリアのジョイント・インタヴューと、ゴメスおよびエヴァンスの知人で俳優のチェヴィー・チェイスの単独インタヴューを所収。アルバム・カヴァーは40~50年代のNorgranやClefレーベルの作品多数を手掛けたデヴィッド・ストーン・マーチンの未発表作画を使用。
2020年度のジャズ発掘ジャンルの掉尾を飾る、価値ある作品である。