1980年9月15日に51歳で永眠したピアニスト、ビル・エヴァンスの音楽と生涯を描いたドキュメンタリー映画『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』の、日本での劇場公開が決定した。4月27日以降、全国各地の映画館で順次公開となる。
「The Life and Music of Bill Evans」の副題からも明らかなように、この作品はモダン・ジャズ・ピアノ史に革命を起こし、現在に至るまで最大級の影響を与え続けているエヴァンスの生涯を、本人の肉声や関係者の証言、音源、画像、動画を交えながら、生誕からの時系列で綴った内容。制作者のブルース・スピーゲルが8年間を費やした労作だ。自身は当初、作品を完成させられるかどうか確信を持てなかったが、2人目にインタヴューしたポール・モチアン(ds)のおかげで使命感を得たという。
インタヴューを受けて登場するのは、ボブ・ブルックマイヤー(tb)、ラリー・ウィリス、ウォーレン・バーンハート、ビリー・テイラー、ドン・フリードマン、ビル・チャーラップ、フランク・コレット、ジャック・ライリ-(p)、マンデル・ロウ、ジム・ホール(g)、チャック・イスラエル、ゲイリー・ピーコック、マーク・ジョンソン、フィル・パロンビ(b)、ジャック・ディジョネット、マーティー・モレル、ジョー・ラバーベラ(ds)、ジョン・ヘンドリックス(vo)といった、所縁があるミュージシャン。さらにオリン・キープニュース(producer)、パット・エヴァンスらの親族、評論家のアシュリー・カーン、ジーン・リースが登場して、故人を偲ぶ。
中でも50年代半ばに初めてエヴァンスに会った時のことや、61年のヴィレッジ・ヴァンガード・セッション、スコット・ラファロ(b)、79年の『パリ・コンサート』を回想するポール・モチアン(ds)は、エヴァンスのファースト・トリオのメンバーであり、2011年に他界しているだけに貴重。70年代にエヴァンスとの2枚の共演作を録音したトニー・ベネット(vo)は、当時を「Great music lesson」と振り返る。エヴァンスが参加したマイルス・デイヴィス(tp)『カインド・オブ・ブルー』(59年)の楽曲を、演奏を交えて解説するエリック・リード(p)が、意外なマニアぶりを披露しているのも興味深い。
『The Universal Mind Of Bill Evans』(66年)等、ファンには知られた素材が含まれる中で、生前に残された最後の動画と思われる80年9月9日のマーヴ・グリフィン・ショーは必見。『ポートレイト・イン・ジャズ』(59年)が初演のオリジナル曲「ペリズ・スコープ」のペリや、73年にエヴァンスと結婚し、75年に息子エヴァンを産んだネネットとの動画も見どころになっている。
音楽家ビル・エヴァンスの姿を人物像と共に浮き彫りにした作品である。