まさに待望の来日公演である。2014年のメジャー・デビュー作『Divine Travels』(Okeh)が話題を呼んだジェームス・ブランドン・ルイス(1980~)は、2020年以降の発表作に限っても、チャド・テイラー(ds)とのデュオ作『Live in Willisau』、アルアン・オルティス(p)らとのレギュラー・カルテット第1弾『Molecular』(以上Intakt、2020年)、レッド・リリー・クインテットの第1弾『Jesup Wagon』(Tao Forms)、カルテット第2弾『Code of Being』 (Intakt、以上2021年)、カルテット第3弾『MSM Molecular Systematic Music – Live』 (Intakt、2022年)、トリオを基本にコルネット、シンセ、ギターが加わった『Eye Of I』 (Anti-)、弦楽四重奏を起用したレッド・リリー・クインテットの第2弾『For Mahalia, with Love』(Tao Forms、以上2023年)、カルテット第3弾『Transfiguration』(Intakt), ジャズ・パンク・ジャム・バンドとの初共演作『The Messthetics and James Brandon Lewis』 (Impulse!、以上2024年) と精力的。今年に入って、トリオ+ゲストの『Apple Cores』(Anti-)と、カルテット第4弾『Abstraction Is Deliverance』(Intakt)が登場しており、この勢いは今後もしばらく続きそうだ。

今回は『Apple Cores』のコア・メンバーであるジョシュ・ワーナー(el-b)、チャド・テイラーとのトリオで、2日間公演の第2夜、ファースト・ステージを観た。ブルックリンを拠点とするワーナー(1974~)は、ビル・ラズウェル、ウータン・クラン(ヒップホップ)、ヘリオ・パラッラックス(レゲエ)との共演歴があり、画家としても活動。ワーナーの呼びかけで結成されたカルテットResilient Vesselsにルイスが参加しており、2021年に『Live at the Cell』(RR Gems)がリリースされている。テイラー(1973~)は10歳からシカゴで育ち、プロ入り後は同地の革新派ミュージシャンとの人脈を築く。2016年にルイスとの共演関係が始まり、2018年発表作『Radiant Imprints』(Off)が最初のデュオの成果となった。

オープニング・ナンバーは、エディ・ハリス(ts) 61年の『Exodus To Jazz』からの「アリシア」。カヴァー・ヴァージョンが極めて少ないこの曲を選んだのは、テナー奏者としての影響関係の可能性も考えられる。悲しみを湛えたようなバラードの原曲を、テンポはそのままにスピリチュアルなナンバーへとアレンジ。テイラーのマレット使用も効果的で、終始テナーがソロをとったこともあって、前奏曲のような雰囲気を醸し出した。

続く「アップル・コアーズ #2」は、近作でインタールード的に配置されていた3分37秒の曲で、当夜はルイスが8ビートに乗って高音域から低音域までを速いパッセージを交えたソロで主役を務めた。

新作からの「プリンス・ユージン」は、ベース・イントロがドラムとのデュオになるミディアム・ナンバーで、テナー・ソロのメロディとスタイルから連想したのが、70年代のビリー・ハーパー。日本民謡の要素も感じさせた咆哮に対して、テイラーがバスドラの3連打のパターンで、テナー・ソロにさらなるエネルギーを注入したシーンに、2人の強い絆が認められた。

「ブロークン・シャドウズ」はオールド・アンド・ニュー・ドリームズを皮切りに、ノエル・アクショテ、ザ・バッド・プラスらがレコーディングしてきたオーネット・コールマンのナンバー。序盤をルイスのアグレッシヴなテナーで飾ると、場面変化を挟んでテイラーも激しいプレイで継投。再びルイスにスポットが当たると、ガトー・バルビエリが思い浮かび、続いてデヴィッド・マレイが二重写しになる。汗のせいか、ソロの途中で眼鏡を外し、フリーキー・トーンも交えながら、長いソロ・パートで自己主張した。そしてテイラーがソロを引き継ぎ、ソロ終わりにリズム・パターンを変えてスロー・ダウン。そのまま曲が終わるのかと思いきや、メドレー的に始まったのがマル・ウォルドロンの名曲「レフト・アローン」。カルテット最新作『Abstraction Is Deliverance』収録曲は、リズミカルなアレンジが新鮮で、ここではワーナーのベースもフィーチャーされた。
●James Brandon Lewis Trio performs “”Left Alone”:
新作からのスロー・ナンバー「オブ・マインド・アンド・フィーリング」も、スピリチュアルなサウンドで終始し、静かに落着した。

当夜のセット・リストで最も興味深かったのが「ザ・ヴィル」だ。レコーディング済みだが未発表の自作曲は、即興のテナー・ソロでスタート。演奏が進んだところで「ボディ・アンド・ソウル」が現れると、「ビバップ」「虹の彼方に」「A列車で行こう」「ザ・グッド・ライフ」等を短く繋げながらの無伴奏ソロであることが明らかに。これを序盤としたトリオ合奏は、リズミカルなバップ色ありのテーマから、ルイスの先発ソロへと展開。上体を前後に動かしながらの熱演に区切りがついたところで、言葉を発した。「よし、決まった!」。ワーナーのソロ・パートに移った間も、ルイスの興奮は冷め止まず、ワーナーを掛け声で鼓舞する。ソロ3番手を担ったテイラーは、リズム・パターンに変化をつけて見せ場を演出。テナー・テーマに進んで、トリオがピタリと落着した。「D.C.・ガット・ポケット」では、テナー・パートのバックをつけたテイラーのフレーズにルイスが反応。このような即興的なやり取りも、また楽しい。

演奏の途中で、ルイスがメンバーを紹介。自身がハワード大学在学中の2005年に、同大のジャズ・アンサンブルで初来日し、「偉大なトランペット奏者」大野俊三と共演経験があるとのこと。そんな日本との所縁を持つルイスは、自身のバンドでは今回が初来日。「みなさんのエネルギーに感謝します」と述べて演奏に戻り、トリオが一丸となってエンド・テーマに進んだ。

アンコール曲は、『Eye Of I』『Abstraction Is Deliverance』に収録の「イーヴン・ザ・スパロウ」。テナー&ベースのユニゾン・テーマで幕を開けるスロー・ナンバーで、ラストまでテナー主導で進んだ。当夜のステージは静と動のコントラストが、トリオの音楽性の一つであることを物語る内容だった。

終演後、事前にメールのやり取りをしていたルイスのバックステージを訪れてインタヴュー。『Apple Cores』のアルバム名は、アミリ・バラカの『Black Music』(1968年)所収の作品から拝借したという。バラカはジャズとの関係が深い作家、詩人、評論家だ。ここで当夜の点が線で繋がった。ルイスが影響を受けて、創作の大きなインスピレーションとする要素は60年代に集中している。それがフリー・ジャズに代表される音楽ばかりでなく、文学にも及んで、ルイスのオリジナリティを形作っていることを知ったのも、当夜の収穫だった。

■Set List
1. Alicia (Eddie Harris『Exodus To Jazz』)
2. Apple Cores #2 (『Apple Cores』)
3. Prince Eugene (『Apple Cores』)
4. Broken Shadows (『Apple Cores』)
5. Left Alone (Mal Waldron) (『Abstraction Is Deliverance』rel.2025)
6. Of Mind And Feeling (『Apple Cores』)
7. The Ville (未発表曲)
8. D.C. Got Pocket (『Apple Cores』)
Encore. Even The Sparrow (『Eye Of I』『Abstraction Is Deliverance』)
■James Brandon Lewis (ts) Josh Werner (el-b) Chad Taylor (ds)
●ジェームス・ブランドン・ルイス website:https://jblewis.com/
●取材協力:東京・丸の内コットンクラブ:













