2019年11月22日付のPJでインタヴュー記事を公開した人気キーボード奏者、ブライアン・カルバートソン。12月13日には同年3月に国内発売された『カラーズ・オブ・ラヴ・ツアー』に続く最新作『ウィンター・ストーリーズ』が登場した。その国内盤のため、カルバートソンにメールで質問状を送ったのだが、時間切れのため、せっかく本人から届いた回答を生かすことができなくなってしまった。そこでお蔵入りにするのは忍びないということで今回、レコード会社の厚意を得て、ここに公開する次第である。
『ウィンター・ストーリーズ』は25年間のレコーディング・キャリアで、初めてのジャズ・トリオ作です。このタイミングで制作した理由は?
BC:アルバム収録曲の作曲を始めた時、アコースティックベースとブラシで演奏するドラムのサウンドが、頭に浮かびました。プロデューサーとしてはアルバムのためのサウンドについて、ヴィジョンを持つ必要があります。そして新作は「よりアコースティックでありたい」と楽曲が私に語り掛けてきた、キャリアで初めての出来事でした。その結果として生まれた方法にはとても満足しているし、“エレクトリックな”方法で制作することはイメージできませんでした。さらにアコースティックなトリオ・サウンドはある意味で時代に左右されないので、本作をクリスマス・アルバムのように今後長年にわたって冬ごとに聴かれるようになれば、と思っています。
スティーヴ・ロドビー(b)、カーリ・パーカー(ds)とのトリオについて教えてください。
BC:スティーヴ・ロドビーとは私のアルバム『モダン・ライフ』(1995年、Bluemoon)に1曲参加してくれて以来、長年のお付き合いになります。その楽曲はファリード・ハーク(g)をフィーチャーした「ウィズアウト・ザ・レイン」。スティーヴのスタイルとパット・メセニー・グループでの演奏が大好きなのです。彼のフレージングや音楽性が私の本作に、完全にマッチすると思いました。さらに彼は私の知る中で最も同調できるアコースティックベース奏者なのです。カーリ・パーカーは私の近年の数作品に参加。幅広いスタイルの持ち主で、本作には最適任だと考えました。あらゆる技巧を兼ね備えているばかりでなく、本作のようにシンプルな編成で表現する作品での演奏に必要な繊細さもあります。二人ともレコーディング・スタジオでは大いに協調性を発揮。それは私が常にスタジオ・ミュージシャンに求めるものでした。
お好きなジャズ・ピアノ・トリオ作は何ですか?
BC:オスカー・ピーターソン『ナイト・トレイン』(62年、Verve)やヴィンス・ガラルディ『ア・チャーリー・ブラウン・クリスマス』(65年、Fantasy)のように、このジャンルでは古典的な作品が好きです。のみならずトルド・グスタフセンやステファノ・ボラーニなど、現在活躍するヨーロッパのピアニストにも関心を持っています。私のアルバムのサウンドは、彼らとまったく似たものではありませんが。
*”Sitting By The Fire” PV
Mason & Hamlin社のピアノを使用し始めたのはいつからですか?ジャズ・ピアニストの多くはSteinway & Sons、Fazioli、Yamahaのどれかを選んでおり、Mason & Hamlinは例外的だと思われます。
BC:初めてMason & Hamlinのピアノを弾いたのは、同社のためのCD『PianoDisc』でした。レコーディング中にそのピアノ・サウンドと感覚に感動し、恋に落ちたのです。私にはとても純粋なサウンドに感じられて、夢中になりました。それで私専属ピアニストになることに興味があるかどうかを尋ねたところ、同社は了承。2005年の『イッツ・オン・トゥナイト』以来、すべてのアルバムで同社製のピアノを使用しています。Mason & Hamlinのピアノは今では私のサウンドの大部分を占めていて、そのピアノ無くしてアルバムを作ることは考えられないほどです。