<11> FACING YOU / KEITH JARRETT (ECM 1017 ST)
■Keith Jarrett(p) 1971.11.10, Oslo
①In Front ②Ritooria ③Lalene ④My Lady; My Child ⑤Landscape For Future Earth⑥Starbright ⑦Vapallia ⑧Semblence
マンフレート・アイヒャーのオファーを受けたキースが、マイルス・デイヴィス・グループの欧州ツアー時にオスロのスタジオで録音した初のソロ・ピアノ作。当時のキースがエレピとオルガンを弾き、マイルスと共に毎ステージで完全燃焼していた演奏とはまったく異なる音楽がここにある。事前に用意した楽曲のスケッチを、スタジオに入ってから全8曲に形作った。アルバム名を全体の象徴的な言葉だと捉えれば、“自分に向き合いながら”自然体で演奏に取り組んだ結果。それまでのレコーディング・キャリアでは生まれなかった成果を獲得した、のだと言えよう。自身が70年代に進むことになる方向性を示唆した記念碑。
<12> LIVE AT GRAN STUDIO 104 IN PARIS, JUNE 9th 1972 / KEITH JARRETT TRIO (Vinylogy / DOL DOR2140H)
■Keith Jarrett(p,ss,wooden fl,tambourine) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds) 1972.6.9, Paris
①Coral ②Forget Your Memories ③Take Me Back ④Standing Outside ⑤Wooden Flute Piece ⑥Piece For Ornette ⑦Common Mama ⑧Follow The Path ⑨Expectations ⑩Moonchild ⑪The Magician In You
1972年はキースの公式リーダー作が生まれなかった年としてファンには記憶されていたが、2014年に『ハンブルク’72』が発掘されたことによって状況が変化。マンフレート・アイヒャーが企画し、72年6月にハンガリー~フランス~ドイツを巡演したアメリカン・トリオ初のヨーロッパ・ツアーの一部が、オフィシャルで日の目を見たのだった。本作は2016年発売のブートレグ2CD『Paris 1972』(Jazztime)から1曲少ない内容で、2017年発売の180g重量盤仕様の2枚組LP。プロモーション用のスタジオ・ライヴとはいえ、興奮と感動を呼ぶ場面が随所で現出する。トリオの『星影のステラ』(85年)~ソロの『パリ・コンサート』(88年)への流れも指摘できるパリ・ライヴだ。
<13> HAMBURG CONCERT / KEITH JARRETT TRIO (Jazz Hour Records JHR 73951)
■Keith Jarrett(p,fl,ss,per) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) 1972.6.14, Hamburg
CD-1: ①El Juicio ②Moonchild ③Follow The Crooked Path ④Standing Outside ⑤Bring Back The Time When (If)
72年6月14日アメリカン・トリオはハンブルクのNDRスタジオ“ファンクハウス”で、2セットのパフォーマンスを行った。2014年6月発売の本作はその全貌を初めて捉えた2CD。『最後の審判』からの①、『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』からの②、『流星』からの③④、『エクスペクテイションズ』からの⑤と、編成が異なる本作以前の70年代作収録曲をこのトリオのレパートリーとしていたことは要注目だ。CD-2は半年後に登場することになる『ハンブルク’72』と同内容。
<14> HAMBURG’72 / KEITH JARRETT (ECM 2422)
■Keith Jarrett(p,fl,ss,per) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) 1972.6.14, Hamburg
①Rainbow ②Everything That Lives Laments ③Piece For Ornette ④Take Me Back ⑤Life, Dance ⑥Song For Che
アメリカン・トリオによる72年6月14日のNDRスタジオ・ライヴのセカンド・セットは、コレクターズLPの『NDR JAZZ WORKSHOP ’72』で①③④⑤が初出し、2014年11月発売の本作で無事に公式盤となった。①(『バイアブルー』)、②(『流星』)、③(『最後の審判』)、④(『エクスペクテイションズ』)と、70年代作からのキース自作曲を柱としたプログラムにあって、スタジオ作未収録のキース曲⑤は前半でトリオがテンポルバートで進み、後半はベース&ドラム・デュオのパートも含む小品。ブックレットの多数のモノクロ写真が、ステージの様子を生々しく今に伝える。
<15> IN THE LIGHT / KEITH JARRETT (ECM 1033/1034 ST)
■Willi Freivogel(fl) Mladen Gutesha(cond) String Section of the Sudfunk Symphony Orchestra,Stuttgart, 1973.2
Disc-1①Metamorphosis
■Keith Jarrett(p)
Disc-1②Fughata For Harpsichord / Disc-2①A Pagan Hymn
■The American Brass Quintet
Disc-1③Brass Quintet
■The Fritz Sonnieitner Quartet
Disc-2②String Quartet
■Ralph Towner(g) Keith Jarrett(cond) String Section of the Sudfunk Symphony Orchestra,Stuttgart
Disc-2③Short Piece For Guitar And Strings
■Piece for four Celli and two Trombones
Disc-2④Crystal Moment
■Keith Jarrett(p,gong,per,cond) String Section of the Sudfunk Symphony Orchestra,Stuttgart
Disc-2⑤In The Cave, In The Light
キースの現代音楽作曲家としての才能にスポットを当てた2枚組。全8曲のうちで楽器を演奏したのが、わずか3曲にとどまるのも、新しい分野へのチャレンジ精神の表れだろう。編曲に約1年半を費やしたフルート・フィーチャー曲Disc-1①、対位法を含む要素を複合的に表現したDisc-1②、キース自身が演奏は不可能に近いと評する約21分の委嘱曲Disc-1③、リズミカルな要素も入ったピアノ独奏のDisc-2①、未知の領域に踏み込んだために本作で最も作曲作業が困難だったというDisc-2⑤。『LUMINESSENCE』(74年)~『ARBOUR ZENA』(75年)へと続く作品ジャンルの出発点だ。
<16> FORT YAWUH / KEITH JARRETT (Impulse AS 9240)
■Keith Jarrett(p,ss,tambourine) Dewey Redman(ts,chinese musette,cl,maracas) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) Danny Johnson(per) 1973,2,24, NYC
①(If The) Misfits (Wear It) ②Fort Yawuh ③De Drums ④Still Life, Still Life
71年のAtlanticセッションでスタートしたアメリカン・カルテットが、キャリアの中核を形成することになるImpulseからの第1弾である“ヴィレッジ・ヴァンガード”ライヴ。オーネット・コールマンを想起させるユニゾン・テーマの①を聴くにつけ、レッドマンとヘイデンのカルテット参加必然性に思い至る。60年代末から70年代初頭、オーネット・グループに在籍した2人が、退団から半年も経たないタイミングで本作のステージに立っていた事実に留意したい。これらを踏まえてドラムを聴くと、デナード・コールマン(ds)の原型がモチアンではないかと思えるから面白い。
<17> THE IMPULSE YEARS, 1973-1974 / KEITH JARRETT (Impulse IMPD5-237)
■Keith Jarrett(p,ss,tambourine) Dewey Redman(ts,chinese musette,cl,maracas) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) Danny Johnson(per) 1973,2,24, NYC
Disc-1①(If The) Misfits (Wear It)②Fort Yawuh ⑤(If The) Misfits (Wear It) (alt.tk) Disc-2①Whistle Tune ②Spoken Introduction ③Angles (Without Edges) ④Roads Traveled, Roads Veiled ⑤De Drums (excerpt) ⑥Melting The Ice
■Keith Jarrett(p,ss,osi drum) Dewey Redman(ts,tambourine) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) Guilherme Franco, Danny Johnson(per)1974.2.27,28, NYC
Disc-3⑨Death And The Flower
■Keith Jarrett(p,ss,wood-fl,osi drum) Dewey Redman(ts,chinese musette,maracas) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) Guilherme Franco(per) 1974.10.9,10, NYC
Disc-5⑤Victoria
未発表曲やコンプリート・ヴァージョンを多数収めた97年発売の5CD。Disc-1,2の『FORT YAWUH』は未発表6曲と完全版3曲の蔵出し状態によって、同夜の詳細な模様が明らかになった。さらに興味深いのがDisc-3『宝島』セッションの未発表曲⑨。8ヵ月後の『生と死の幻想』で初演収録されることになる楽曲が、すでに試演されていたわけで、22分46秒の初出ヴァージョンの原型は約半分の10分2秒だった。LP時代の収録時間問題ばかりでなく、次の作品でさらに発展させられる可能性を持った楽曲、との判断があったのではないだろうか。新発見多数のボックス・セットだ。
<18> SOLO CONCERTS / KEITH JARRETT (ECM 1035-37 ST)
■Keith Jarrett(p) 1973.3.20, Lausanne
CD-2①Lausanne, March 20,1973 Part I/II
■Keith Jarrett(p) 1973.7.12, Bremen
CD-1①Bremen, July 12,1973 Part I ②Bremen, July 12,1973 Part II
71年のチック・コリアとキース、72年のポール・ブレイによるスタジオ録音で、ソロ・ピアノ作の礎を築いたアイヒャーは、『IN THE LIGHT』の録音後にキース・ソロの欧州ツアーをブッキング。ブレーメンとローザンヌ公演をLP3枚組にパッケージした本作は、長時間の即興ソロという演奏形態を含めてジャズ界では前例がなく、音楽的な成果と合わせて世界的な大反響を呼んだ。その後40年にもわたってキースの活動の中軸となるプロジェクトの第1弾を3枚組としたアイヒャーの英断は、やはり賞賛に値する。CD化によってパートに分かれていた音源が連続演奏に復元された価値も大きい。
<19> TREASURE ISLAND / KEITH JARRETT (Impulse AS 9274)
■Keith Jarrett(p,ss,osi drum) Dewey Redman(ts,tambourine) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds,per) Guilherme Franco, Danny Johnson(per) 1974.2.27,28, NYC
①The Rich (And The Poor) ②Blue Streak ③Fullsuvollivus (Fools Of All Of Us) ⑤Introduction And Yaqui Indian Folk Song ⑥Le Mistral ⑦Angles (Without Edges)
■add Sam Brown(g)
④Treasure Island ⑧Sister Fortune
『FORT YAWUH』同様、シングル・アルバムながらダブル・ジャケット。その内側にはこのような詩編が印刷されている。「宝物はいつでもそこにある/それは隠されてはいない/でも決まった人たちがすべてを見ることのできる場所にだけ、それは存在する/だから残りの人々には秘密のままなのだ」。ジャケットには架空の宝島の地図も添えられていて、類例のないハッピーなコンセプト・アルバムに仕上がっている。タイトル曲④はやはりサム・ブラウン参加作『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』を連想させて、アメリカン・カルテットとは異なる音楽性をあえて取り入れたのがユニークだ。
<20> NDR JAZZ WORKSHOP ’74 (Norddeutscher Rundfunk 0666 516)
■Jan Garbarek(ss) Keith Jarrett(p) Palle Danielsson(b) Jon Christensen(ds) 1974.4.18, Hannover
①The Windup
72年のアメリカン・トリオの実績がある北ドイツ放送による企画プロジェクトに、アルバム・デビュー前のヨーロピアン・カルテットが参画。ゲイリー・バートン4、ミシェル・ポルタル5の各1曲と合わせた全3曲のLPは、廃盤市場で高額のコレクターズ・アイテムだった。その後この曲を含む映像作品がブートVHSで登場し、DVD化によってアクセスが簡便化。現在は2CD-R+1DVD-Rのブートで入手可能だ。『BELONGING』録音の直前の状況がわかる貴重な1曲。