ホリー・コール初のフル・アルバム『Girl Talk』(90年)のアーティスト・クレジットは“Holly Cole Trio”だった。86年結成のトリオはピアノ+ベース+コール(vo)。ダイアナ・クラールのようなピアノも弾く歌手ではないのに、トリオを名乗ったのが新鮮だった。92年の本邦デビュー作は原題の『Blame It On My Youth』のカタカナ表記ではなく、収録曲から採用した『コーリング・ユー』だった。89年の日本公開作『バグダッド・カフェ』の挿入曲は、同映画がこちらでも大ヒットしたことで、邦題の選択としては当時のレコード会社が放った最大級の功績となった。日本では「コーリング・ユー」がコールのイメージ作りを決定づけ、今もそれは揺るがない。
今回の来日は6年ぶりの新作『ホリー』のリリース直後となる好タイミング。エリック・クラプトン、ランディ・ニューマン、ライ・クーダー、リッキー・リー・ジョーンズを手掛けたラス・タイトルマンをプロデューサーに、ラリー・ゴールディングスをアレンジャーに迎え、スタンダード・ナンバーを中心とした選曲で構成した。来日メンバーにはコールのデビュー時から30年以上の信頼関係を築いているピアニストのアーロン・デイヴィスが帯同。成熟度を極めたヴォーカリストの魅力を堪能できるだろう。
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