音楽家・プロデューサー、デイヴィッド・フォスター(69)のトーク&ミニ・ライヴが、11月29日に東京・港区の駐日カナダ大使公邸で開催された。カナダ・ブリティッシュコロンビア州出身のフォスターは、わずか16歳でプロ入り。LAに拠点を移した70年代以降、スタジオ・ミュージシャン、ソングライター、プロデューサーとして、アース・ウィンド&ファイア、ボズ・スキャッグス、シカゴ等々、数多くのヒット作を手掛け、グラミー賞受賞16回の輝かしい実績をあげているカナダの名士だ。当夜はこの11月が創業30年となるブルーノート東京に出演するタイミングでの、記念イヴェントだった。

まず駐日カナダ大使の挨拶があり、カナダが海外に設置した建物の中では東京の大使館が最も古い、等のエピソードが紹介され、フォスターの経歴についても語られた。大使に続いてフォスターは6回目の今回までの来日を振り返り、90年代の日本武道館公演にセリーヌ・ディオンがバック・ヴォーカリストで参加したことや、カナダのミュージシャンについての持論を披露した。

最初の曲紹介ではホイットニー・ヒューストン主演・歌唱の映画『ボディガード』のサウンドトラックを手掛けたエピソードと共に、「ホイットニーがベストの時に、いっしょに仕事ができたことを誇りに思う」と語ったのは、実感がこもっていた。1曲目の「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー」(92年)はプリプロダクションのバンド・サウンドを用意して自身がピアノを弾く演奏。フォスター主催の2011年のオーディションで認められた邦人歌手RIRIが、100名の来場者を前に大役を果たした。
2曲目はフォスター・プロデュース、チャカ・カーン歌唱が原曲の「スルー・ザ・ファイア」(84年)で、インドネシア出身の歌手ディラ・スガンディが歌った。

開演からの予定プログラムは30分だったので、ここで終了だったのかもしれないが、パフォーマーの本性に火がついたらしいフォスターは、観客に「きよしこの夜」の歌唱協力を提案。自身の伴奏に合わせて、男性客~女性客~全員による合唱をすることになった。ここで当夜の出演予定がなかった、翌日のブルーノート東京出演者のブライアン・マックナイトがフォスターから指名を受けて、ファルセット全開の歌唱で貢献。ステージと客席が一体となる演出に、大プロデューサーの即興的な手腕を感じさせた。

終演後のカクテル・レセプションでは、出演者と関係者の交流が図られ、すべての来場者にフォスターの偉大な業績とカナダ大使館のホスピタリティが共有された。
