ユー・ナムというちょっと変わった名前のギタリストを知ったのは、ちょうど10年前のことだった。2007年発売の新作『Back From The 80s』をタワーレコード新宿店で見つけたところ、裏ジャケットにジェフ・ローバー、ポリーニョ・ダ・コスタ、マイケル・ホワイト、アレックス・M、アンディ・ナレル、メルヴィン・デイヴィス、メイザ・リークといったフュージョン作ではお馴染みのメンバーが記され、クルセイダーズ「ストリート・ライフ」、ジョージ・ベンソン「ターン・ユア・ラヴ・アラウンド」、マイケル・ジャクソン「アイ・キャント・ヘルプ・イット」の選曲と合わせて、品質保証を直感して購入。聴いてみれば大当たりで、日本では無名の才人を発見する喜びを味わった。
ジョージ・ベンソンへの敬愛と、70~80年代のフュージョンとソウル・ミュージックに対するシンパシーが、R&Bに根差した歌心溢れるプレイと共に好ましく伝わってきて、現在も愛聴盤である。2012年には恩師への愛を全面的に表明した『Weekend In L.A. ~A Tribute To George Benson』が国内盤として初めてリリースされ、日本でもその存在が一躍知られることとなった。
本作はこれまでの5タイトルからの13曲に、新曲3トラックを加えたベスト・アルバムだ。『Back From The 80s』と同じく「ストリート・ライフ」を1曲目に置いたのは、リスナーのハートを掴んだ出世作のキラー・チューン、との意識があるからだろう。ギターのみならず、ベース、キーボード、ドラム・プログラミングも自身が手掛けて、ほぼ1人で作ったサウンドは、原曲のストリングスを再現しつつ、新鮮さも表現。
ローバーのローズ・ソロをフィーチャーしたのも、フュージョン好きの心をくすぐる。ホーン・セクションとアイバニーズ・ギターがリズミカルに絡んで心地良いグルーヴを生む「ブリージン・MA」、「ブリ-ジン」を含めて70年代後半のベンソンの音作りの研究成果と言える「キープ・ザ・フェイス」と、『Back~』収録曲は個人的に嬉しい。
ロッド・テンパートン作曲・マンハッタン・トランスファー歌唱のヴァージョンを踏まえた再アレンジの巧みなセンスが明らかな「スパイス・オブ・ライフ」(『Surface Level』収録)、ヴォーカル・パートのコール&レスポンスをギターの一人二役でこなすジョージ・デューク曲「シャイン・オン」(『Unanimity』収録)と、私のような“あの頃”をリアルタイムで体験した者に共感を抱かせる音楽を、おそらく一回り若いU-Namが作ったことも評価したい。
新曲ではバリー・ホワイトが「愛のテーマ」に続いて出した『レット・ザ・ミュージック・プレイ』のタイトル曲を、「愛のテーマ」寄りにアレンジして、再び70年代ソウルへのオマージュを捧げるのが痛快。スムース・ジャズ・ギタリストと紹介されることもあるが、軽く扱うのは不適切。ノーマン・ブラウン以来の逸材と言いたいギタリストである。
- ①Street Life ②Going For Miles ③Something’s Up ④Throwback Kid ⑤Keep The Faith ⑥Groove Paradise ⑦Let The Music Play ⑧Soul Breeze ⑨Smoovin’ ⑩Love X Love ⑪Spice Of Life ⑫Breezin’ M.A ⑬Risin’ To The Top ⑭Shine On ⑮Back in Style ⑯Soul Breeze (Radio Edit)
- U-Nam(g,key,b,drum-prog) & others p.c.2017
- Skytown Records STR010
- 協力:インパートメント