1970年代にリアルタイムでフュージョン全盛期を体験した音楽ファンにとって、ブレッカー・ブラザーズは特別な存在だ。75~81年の6タイトルで一時代を築いたランディ&マイケルは、その後別々の道を歩んでキャリア・アップ。90年代に入って再結成を果たし、時代のトレンドを取り入れた音作りの2タイトルによって進化する姿を見せてくれた。多忙な2人ゆえ、ブレッカーズとしての活動は継続しなかったものの、WDRビッグ・バンドとの『Some Skunk Funk』(2005年)等で、しばしば共演。マイケルがテナーの巨匠へと上り詰めるも、2007年に逝去し、再々結成の芽はなくなった。しかしランディは兄弟バンドのレガシーを伝えるために、リユニオン・バンドを結成して、2011年のライヴを2013年に『The Brecker Brothers Band Reunion』でアルバム化。今回はマイケル没後10年の節目の来日となった。
ランディが考えた2017年版のブレッカーズは、78年録音作『ヘヴィ・メタル・ビバップ』のリユニオン。同作参加メンバーのバリー・フィナティ、ニール・ジェイソン、テリー・ボジオが再結集し、ランディの妻で前述の2011年ライヴの一員でもあるアダ・ロヴァッティを加えたクインテットを編成。ステージの冒頭でランディは「ずっと会っていなかったメンバー」と紹介し、リユニオン感の期待を高めた。しかしそれは同時に久々ゆえの不安を伴っていたのも事実。オープニング曲の『ヘヴィ~』からの「スポンジ」はエフェクターをかけた同作と同じベース・ラインが流れてきて、一気にタイムスリップした。トランペット~テナー~ギターの短いソロ・リレーが3周してエンド。サンバ調で2管が掛け合いを演じる前述の2013年作収録のランディ曲「ファースト・タイム・オブ・ザ・セット」、ブレッカーズのカラーに同調したロヴァッティ作曲の「ゴースト・ストーリーズ」(2014年作『Disguise』収録曲)、ランディが「マイケル・ブレッカーが書いた最も有名な曲の一つで、演奏するのが難しい」と紹介した「ストラップハンギン」、フィナティがマイケルに捧げて作曲してランディ参加のリーダー作『Manhattan Sessions Part 1』(2010年)に収録した「マイキー・B」と、『ヘヴィ・メタル~』以外の楽曲を採用して、単なる同窓会に終わらせない姿勢を示す。
プログラム最後の3曲は『ヘヴィ・メタル~』収録曲の固め打ち。終盤テナーの無伴奏ソロをフィーチャーすると、それにベース・ラインが同調してエンド・テーマに至る「ファンキー・シー、ファンキー・デュー」、スラッピングを交えたプレイでジェイソンが技巧者ぶりを印象付ける名曲「サム・スカンク・ファンク」、作曲者のジェイソンがヴォーカルでも優れた才能を見せ、ボジオが要塞のようなドラム・セットで強力なソロを叩き出したヘヴィ・ファンク曲「イースト・リヴァー」と、全員が現役バリバリの存在感を輝かせた。次の節目のタイミングでも、リユニオン・ライヴを希望したい。