戦後ドイツのジャズ界に多大な貢献を果たしたクラリネット奏者ロルフ・キューン(90)とピアニスト、ヨアヒム・キューン(75)の兄弟を描いたドキュメンタリー作品が、9月21日に同国のTV局3satで放映された。『Brüder Kühn – Zwei Musiker spielen sich frei』(キューン兄弟~自由に演奏する2人のミュージシャン)は、Stephan Lamby監督による1時間30分の作品。ヨアヒムがアルトサックスを吹くシーンで始まり、曲芸師だった父親が“Kuhn Bros”として活躍したエピソードを踏まえながら、兄弟に密着したインタヴューを主軸に、キャリアを明らかにしてゆく。
ロルフはハンブルクでのカルテット・ライヴ、ラジオ番組出演、ベニー・グッドマンとの共演写真を見ながらの回想、56~59年を過ごしたニューヨークでの所縁の場所を訪ねるシーンを収録。
ヨアヒムは67年のクインテットの演奏、ロックに傾倒した78年のハリウッドでのシーン、ポーランドでの交響楽団との共演ステージ、マドリッドの空港で作曲する様子、マルシアックでのトリオ・ライヴ、イビザにある自宅でのセッション等、兄とは異なる音楽性で歩んだ足跡を浮き彫りにする。
キューン兄弟は65年の『Re-Union In Berlin』(CBS)以降、『Impressions Of New York』(68年、Impulse)、『Love Stories』(2003年、In+Out)、『Lifeline』(2012年、Impulse)等、折々に共同名義作をリリースしており、音楽家として尊敬し合う兄弟の強い絆をファンに印象付けてきた。
映像の終盤に進むと、兄弟がドイツ・フィリンゲンで再会し、教会でデュオ・ライヴを行うシーンが出てくる。本映像作には第二次世界大戦や東西ドイツ統一といった、母国の歴史を伝えるモノクロ映像が挿入されて、ドイツ人として激動の時代を生き抜いてきた2人の姿と、音楽家としての姿を重ねているのが特色とも言える。