大阪市北区にあるイタリア文化会館-大阪(Istituto Italiano di Cultura di Osaka)は、これまでに同館のウェブサイトでジャズを含む豊穣なイタリア音楽を紹介してきた。その宝庫と呼べるイベント・サイト「IIC Osaka Eventi Online」では様々なビデオが視聴可能となっており、イタリア音楽の今を知る上で絶好のコンテンツに触れることができる。
Eventi Online:https://eventionline.net/
ダニーロ・レア&ルチャーノ・ビオンディーニ・ライヴ
新たに加わったビデオは、「ダニーロ・レア&ルチャーノ・ビオンディーニ・ライヴ」。これは三重県熊野市とイタリア・ナポリ県ソレント市が、2001年11月29日に姉妹都市盟約を締結してから20周年を迎えたことを記念した特別プログラムだ。観光や産業で共通点がある両都市が、コロナ禍を乗り越えて友情と交流を深めていくために企画された。
1957年生まれのピアニスト、ダニーロ・レアは、ロベルト・ガット(ds)らと結成したトリオ・ディ・ローマで75年にデビュー。80年代にエンリコ・ピエラヌンツィ(p)が評価を高めた自己のスペース・ジャズ・トリオのメンバーだったエンツォ・ピエトロパオリ(b)、ファブリッツィオ・スフェッラ(ds)と97年に始動したトリオ、ドクター3は、デビュー作『The Tales Of Doctor 3』(VVJ)が伊「ムジカジャズ」誌の年間最優秀作に選出され、99年、2001年、2003年には同誌の最優秀イタリアン・ジャズ・グループに輝き、これまでに10タイトルを発表。
2000年に初の個人名義作をリリースし、2004年には国内制作の『ロマンティカ』(Venus)が登場して、日本でその名が広まった。ニニ・ロッソ(tp)・グループやフラビオ・ボルトロ(tp)とのデュオで来日歴があり、2015年にはソロ・コンサートで来日。翌2016年にはビートルズとローリング・ストーンズをカヴァーしたソロ作『サムシング・イン・アワ・ウェイ』(Warner)が日本発売され、イタリアを代表するジャズ・ピアニストの地位を確立している。2019年からはイタリアの文化とエンタテインメントに貢献した者を顕彰する「ソレント半島国際賞」の音楽部門のトップを務める。
アコーディオン奏者のルチャーノ・ビオンディーニは1971年生まれ。10歳からアコーディオンを始め、クラシックを学んだ後にジャズへ傾倒。エンリコ・ラヴァ(tp)、トニー・スコット(cl)と共演し、000年以降はガブリエーレ・ミラバッシ(cl)らとの『Lo Stortino』(EGEA)、ハビエル・ジロット(ss,bs)とのデュオ作『Terra Madre』(Enja)、ファブリッツィオ・ボッソ(tp)とのデュオ作『Face To Face』(Abeat)等をリリースしており、イタリアを中心に欧州で知名度を獲得。
2018年には『Cinema Italia』(VVJ)で共演したロザリオ・ジュリアーニ(as)・カルテットのジャパン・ツアーに参加し、存在感のあるプレイで観客を魅了した。ピアニストとのデュオ作では、リタ・マルコチュリとの『La Strada Invisible』(2014年、ACT)の実績がある。
ダニーロ・レア&ルチャーノ・ビオンディーニ・ライヴは、日本でもお馴染みのステファノ・ボラーニ(p)の録音もある「あなたが大好き」で幕を開け、「カルーソ」、「帰れソレントへ」、「素晴らしいあなた」等のイタリアン・ソングでセットリストを構成した計9曲、約50分のプログラム。彼らのデュオによるアルバムは制作されておらず、その意味でジャズ・ファンの興味を喚起するビデオと言える。演奏中には随所でソレントの風景映像が挿入され、海外旅行の気分を味わいながら音楽を鑑賞できる工夫が凝らされている。なお動画の冒頭と演奏終了後にはマッシモ・コッポラ ソレント市長と河上敢二 熊野市長の挨拶が上映される。このライヴは2022年3月31日まで視聴可能だ。
■ダニーロ・レア&ルチャーノ・ビオンディーニ・ライヴ
https://eventionline.net/artist_video/s233/
1)TE VOJO BENE ASSAJE(あなたが大好き)
2)NAPULE È(ナポリは)
3)METTI UNA SERA A CENA (ある夕食のテーブル)
4)CARUSO(カルーソ)
5)TORNA A SURRIENTO(帰れソレントへ)
6)AZZURRO(アッズッロ/青空)
7)TU SI ‘NA COSA GRANDE(素晴らしいあなた)
8)LA DONNA RICCIA(巻毛の女性)
9)HALLELUJAH(ハレルヤ)
アーティストプロフィール
■ダニーロ・レア Danilo Rea(ピアノ)
1957 年ヴィチェンツァ生まれ。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院修了。クラシック音楽、ロック、ポップスに影響を受けるが、とりわけ熱心に取り組んだジャズによって、メロディと即興が融合する独特のスタイルを極める。
1975 年、エンツォ・ピエトロパオリ(b)、ロベルト・ガット(ds)とともに「トリオ・ディ・ローマ」を結成し、ジャズ・ピアニストとしてデビューする。1980 年代には、ジョヴァンニ・.トンマーゾ(b)のクインテットやマウリツィオ・ジャンマルコ(sax)のグループ「リンゴマニア」に参加。1997 年 E.ピエトロパオリ、ファブリッツィオ・スフェッラとともに「ドクター3」を結成し、10 年以上にわたりイタリア国内、またヨーロッパ各国、アメリカ、南米、中国などで活躍する。2000 年にソロとしての初アルバム『Lost in Europe』(VVJ)をリリース。2 作目の『Lirico』(EGEA)ではオペラ作品を即興で弾き、オペラとジャズをミックスした作品を創り上げた。
その後も 『Solo』(2006 年、Parco Della Musica)、『Introverso』(2008 年、EmArcy)、『A Tribute to Fabrizio De Andre』(2010 年、ACT)をリリース。国際的に著名なジャズ・アーティストと共演するほか、ミーナ、クラウディオ・バリオーニ、ドメニコ・モドゥーニョ、フィオレッラ・マンノイア、アドリアーノ・チェレンターノ、リッカルド・コッチャンテらポップス畑の人気シンガーとも共演している。特にミーナからは 2001 年のアルバム収録に参加を依頼されるなど、現在でも厚い信頼を得ている。また近年では、世界屈指のバッハ弾きと呼ばれるクラシック・ピアニストのラミン・バーラミとの共演プロジェクト「Bach is in the air」や、イタリア文化財・文化活動省とカンパニア州の後援のもとソレント市で開催される重要な国際文化祭「ソレント半島国際賞」の映画・音楽部門責任者としての活躍でも注目を集める。
マルチな活動をするアーティストで、2018 年には自叙伝『IL Jazzista imperfetto』(不完全なジャズマン)を発表。同名のラジオ番組シリーズが 2020 年にイタリア国営放送の RAI Radio1 で放送された。
■ルチャーノ・ビオンディーニ Luciano Biondini(アコーディオン)
1971 年ウンブリア県スポレート生まれ。10 歳からアコーディオンを学び、多くの全国大会で優勝。スペイン、ドイツ、デンマーク、クロアチア、アンドラ等のヨーロッパ諸国でコンサートに出演。また、様々なテレビ・ラジオ番組や映画祭にも参加したほか、ウンブリア・ジャズ、アンコーナ祭など、多くのジャズ・フェスに出演。これまでにエンリコ・ラヴァ、トニー・スコット、ガブリエーレ・ミラバッシ等と共演、ジャズやフォークの有名アーティストたちの CD レコーディングにも多数参加。ダイナミクスに富んだ音色、歌心に満ちたフレーズは眩いほどに光り輝いている。日本でも情熱的なプレイでファンの心を掴んだ。
現在IIC Osaka Eventi Onlineで公開中のビデオ
アントニオ・ザンブリーニ・トリオ:
https://eventionline.net/artist_video/s220/
ファビオ・コンカート&パオロ・ディ・サバティーノ・トリオ:
https://eventionline.net/artist_video/s213/
トリオ ヴェッツォーゾ/コッリーナ/マルケジーニ:
https://eventionline.net/artist_video/s207/
ダニエレ・セーペ:
https://eventionline.net/artist_video/s203/
アルベルト・マルシコ&オルガン・ロジスティクス:
https://eventionline.net/artist_video/s167/
クビクルム:
https://eventionline.net/artist_video/126/
マッシミリアーノ・ロルフ:
https://eventionline.net/artist_video/44/
ケッコ・フォルナレッリ・トリオ:
https://eventionline.net/artist_video/48/
マルコ・ヴェッツォーゾ&アレッサンドロ・コッリーナ:
https://eventionline.net/artist_video/53/
マルコ・パカッソーニ:
https://eventionline.net/artist_video/59/
マッシミリアーノ・ロルフ: