Live at the Village Vanguard / Mark Turner Quartet
■①Return From The Stars ②Terminus ③Bridgetown ④BrotherSisterwav ⑤Nigeria 2 ⑥Lincoln Heights ⑦1946 ⑧Unacceptable ⑨It’s Not Alright With Me ⑩Wasteland ⑪Lennie Groove
■Mark Turner(ts) Jason Palmer(tp) Joe Martin(b) Jonathan Pinson(ds) 2022.6.14-16, NYC
■Giant Step Arts GSA 010
現代ジャズ・テナー界最前線の一角を担うべテランが、米新興レーベルの新シリーズ “Modern Masters and New Horizons”に登場
本作の録音年月日を踏まえると、2019年録音/2022年3月リリースの『Return From The Stars』(ECM)のレコ発ライヴとして出演したNYの老舗クラブでのステージだろう。レコーディング・メンバーが同作の全8曲+3曲を演奏するセットリストは、スタジオ録音の拡大版であり、ライヴ・バンドとしての魅力を加味した点でも見逃せない。コード楽器のピアノやギター抜きの2管でターナーが追求したサウンドは、敬愛するトリスターノの音楽性に依拠した上での現代的展開。ECM作との音場における空気感の違いを味わうのも一興だ。
Austrian Syndicate / David Helbock
■①Money in the Pocket ②Hymn to Vienna ③The Third Man ④Dinde et Dindon ⑤Ballad for Schönenbach ⑥The Ups and Downs ⑦Adventur ⑧Grundbira Dance ⑨Crimson Woman ⑩We Need Some Help Down Here ⑪Nuyorican ⑫Komm, lieber Mai und mache
■David Helbock(el-p,syn,effects) Peter Madsen(p) Raphael Preuschl(b,b-ukulele) Herbert Pirker(ds) Claudio Spieler(per) Fred Wesley(⑨:tb) Lakecia Benjamin(⑥:as) Alex Acuña(①:per) Dhafer Youssef(③:vo) Maria João(⑫:vo) 2023.2.26,27, Mitterretzbach, Austria
■ACT Music 9974-2
ACT総帥の薫陶を受けた鍵盤奏者がオーストリアの精鋭とのバンドに著名ゲストを迎えて、母国の巨人に敬意を表明
このプロジェクトを実現させるために、2001年に移住して、学生時代のヘルボックの指導者を務めたマドセンをピアノ専担に迎え、自身は初めてエレピとシンセに専念。ザヴィヌル曲は①にとどめて、自作とマドセン曲を中心に構成したあたりに、独自のトリビュート精神が明らか。「ティーン・タウン」を想起させる④、鍵盤の音作りが特徴的な⑤、エレクトリック・ファンクの⑨等、師が生涯にわたって基盤としたハイブリッドな音楽性を追求する姿勢に共感。多彩なゲストにあって、モーツァルトを奇想天外な手法で再構築したジョアン参加の⑫が刺激的だ。
Trio: ri-metos / Henry Hey
■①Season Of The Thicket ②Etoile ③Cobalt ④Post Road ⑤Weekly Benefits ⑥Swirl ⑦If I Should Lose You ⑧Live By Love ⑨The Wandering Song ⑩The Gardener (for Jane Hey)
■Henry Hey(p) Joe Martin(b) Jochen Rueckert(ds) NYC (c) 2023
■Henry Hey 9764488591
ジャズ、フュージョンに加えてロック、映画音楽でも活動を展開するピアニストの、実に20年ぶりとなるトリオ作
紀元前のミクロネシアの船員が海上で航路を見つけるために使用したスティックチャート(ジャケット写真に使用)に着想を得たヘイが、自作5曲とメンバー提供曲を含む10曲で構成したコンセプト作。物語性を感じさせる①、トリオの疾走感が心地いい③等、2003年作『Watershed』(Sirocco)のドラマーでもあるリュッカートが刻む様々なビートの効果もあって、サウンドが太平洋を移動する航海者のイメージと重なるあたりがユニーク。ヴィンス・メンドーサが未発表の⑧⑨を提供したことも見逃せず、間違いなく本作の収穫だ。
The Gori Project II / Torben Westergaard
■①And This Is So ②You Then Who ③Bruised Blue ④Democrazy ⑤Meskel ⑥Flute Me Up ⑦NowThen When ⑧Another Day Within ⑨Det Var En Lørdag Aften ⑩Daily News
■Torben Westergaard (b,key,vo) Hyelim Kim (daegeum) René Damsbak (tp,flh,syn, electronics) Marilyn Mazur (per) 2022.10-11, Denmark
■TWMUSIK021
デンマーク人ベーシストの韓国プロジェクト第2弾
タンゴやブラジル音楽にも取り組んで表現領域を拡大してきたヴェスタゴーは、2019年に本プロジェクト第1弾で欧3+韓2のクインテットを制作。今回はメンバーを一部入れ替えたカルテットに刷新し、韓国伝統音楽とジャズの融合をさらに深めるコンセプトに挑戦。韓国横笛テグムの椅子はそのままに奏者が交代したサウンドは、北欧色の濃いトランペットとの2管に電気系が加わったことによって、西洋と東洋の現代的融合に成功。新加入のマズールの貢献も、もちろん大。
Moonlight Drive / Jakob Dinesen
■①Ingrid ②Blue Ace ③Aveny T ④Yahya ⑤Slacker ⑥Dino min Dino ⑦Moonlight Drive ⑧Fela ⑨New Beginnings
■Jakob Dinesen(ts) Anders Christensen(b) Laust Sonne(ds,⑦:as) 2022.10.30-31, Copenhagen
■April Records APR115CD
デンマーク人サックス奏者らのコードレス・トリオ第2弾
コンボ、3管、ウィズ・ストリングス作等で現在の地位を築いたディネセン(1968~)は、過去にトリオ作の実績があり、2020年録音/2021年発表のコペンハーゲン・ライヴ『Blessings』では共演者が交代。同じトリオによる本作は前作とは異なり、カヴァー曲無しのメンバー提供各3曲で構成しており、全体的に夜のイメージで統一したアルバム・コンセプトが認められる。特にディネセンは母国の詩人への④、フェラ・クティへの⑧、メンバーの友情への⑨の、捧げものに特化してプレイ。
Songs By Saxophonists / Leander 4
■①Fear of Roaming ②Höstballad ③Edda ④Aniarku ⑤Sleepless ⑥Lördagsballaden ⑦Serenity ⑧This I Dig of You ⑨Effesso ⑩Blues fro Bass ⑪Blackwell’s Message
■Rune Leander (ts,ss,bs,fl) Tommy Kotter(p) Yasuhito Mori(b) Anders Kjellberg(ds) 2022.10.24-25, Gothenburg
■Imogena IGCD273
スウェーデンのマルチ・サックス奏者が偉人をトリビュート
TVコマーシャルや舞台音楽も手掛けるイェーテボリのリアンデルは、50年代から現代までの米国人サックス奏者を聴くのが好きで、その嗜好を選曲に反映。ウェイン・ショーターのアップ・ワルツ③、コッテルをフィーチャーしたジョー・ヘンの⑦、ハードバップの精神を今に受け継ぐハンク・モブレイの⑧、森泰人の好演も光るジョー・ロヴァーノの⑪といったように、音楽性の土台を披露。自作3曲の中ではバリサク使用が、母国のラーシュ・ガリンへの敬愛に重なる④を特筆。
全曲試聴:https://open.spotify.com/intl-ja/album/62gCNZNvDKEM9t3NEKIlLH
Live At Jazzcup / Caesar Frazier
■①Jive Samba ②You Don’t Know What Love Is ③King of Leonne ④Thieves in the Temple ⑤You’ve Changed ⑥A Night in Tunesia ⑦1-2-3 ⑧I Wanna Make It with You ⑨Willow Weep for Me
■Caesar Frazier(org) Jonas Kullhammer(ts) Johannes Wam berg(g) Kresten Osgood(ds) 2022.11.5-6, Copenhagen
■Stunt Records STUCD 23042
2010年代に再浮上したオルガン奏者のコペンハーゲン・ライヴ
70年代にマーヴィン・ゲイとルー・ドナルドソンをサポートし、リーダー作を制作。その後ソウル歌手に転身し、2018年に40年ぶりのジャズ復帰作をリリースしたフレイジャーが、北欧カルテットを率いてStuntの本拠地に出演。この編成によるスタンダード・ナンバーを中心としたプログラムは、安心して楽しめる趣向で、大陸と世代を超えた共演が好ましい。プリンスの④やポップ・ヒット⑧の選曲もアクセントに。成りきりぶりを発揮し、③で大暴れするフリー派のカルハマーを称賛。
入手先:東京エムプラス
全曲試聴:https://open.spotify.com/intl-ja/album/4T5NaJucHeTD2rLMsAIcrU
Soul Song / Yosef-Gutman Levitt
■①Chai Elul ②Soul Song ③Myriad ④Song Of The Sea ⑤The Tender Eyes of Leah ⑥Amud Anan Duet ⑦Torah Tsiva ⑧Kave El Hashem ⑨Devotion ⑩Tikun ⑪Kol Dodi ⑫Desert Song ⑬Hashkama ⑭Amud Anan
■Lionel Loueke(g) Omri Mor(p) Yosef Gutman Levitt(b) Ofri Nehemya(ds) summer 2022, Jerusalem
■Soul Song Records
音楽界に復帰したベーシストの時代を超えた友情物語
南ア出身のレヴィットは米バークリー音大時代に知り合ったルエケと、NYへ移ってからも共演関係を継続。その後、音楽から離れて異業種に移る一方、ギタリストはハンコックの薫陶を受けて大成功。エルサレムに移住していたレヴィットは2018年に再始動し、2022年のトリオ作を経て同じメンバー+1の本作に至った。ポジティヴでハートウォーミングなメッセージが宿る楽曲が並んでおり、ルエケの新しい一面を知る思い。レヴィットが立ち上げた新レーベルの美しい船出作。
全曲試聴:https://open.spotify.com/intl-ja/album/04Po37SvFkvOAe4s4XFAZR
Yosef Gutman Levitt – Soul Song (Feat. Lionel Loueke):