Funeral Dance / Helge Lien Trio
■①Adam ②Après Un Rêve ③Riss ④Funeral Dance ⑤Kaldanuten ⑥Gupu ⑦The
Silver Pine ⑧Bømlo ⑨A Wonderful Selection Of Gloomy Keys ⑩Sævelid
■Helge Lien(p) Johannes Eick(b) Knut Aalefjaer(ds) Tore Brunborg(ts) early 2022
■Ozella Music OZ106CD
日本での人気も盤石なノルウェーが誇るトップ・ピアニストが、学生時代の恩師に捧げた自己のトリオ+1新作
ノルウェー国立音楽大学で19歳のヘルゲを指導したミーシャ・アルペリン(1956~2018)の他界を契機に、トリオでリハーサルを行ってコンセプトを練り、1年後からツアーを重ねて、コロナ禍の中でアルバムを完成。母国の先輩格で、アルペリンとの共演歴があるブルンボルグ(4曲提供)の起用は、追悼色に加えてトリオの新境地を開く成果を挙げているのが重要。さらに①を始め、キース・ジャレット欧州四重奏団を想起させるシーンも認められて、それが意図せぬ収穫だとしたらまさに歓迎案件。ヘルゲのらしさと進化がじっくりと熟成した1枚だ。
●アルバム試聴:https://open.spotify.com/intl-ja/album/7705DbH2prtKgDn3rUYTTE
Labyrinth / Nicole Johänntgen
■①Labyrinth ②In Gedanken ③Canyon Wind ④Simplicity Curiosity! ⑤Straight
Blues, Baby, Straight ⑥Lac Leman ⑦Get Up and Dance ⑧Good Night My Dear
⑨Little Song for Nenel ⑩Song for Nenel
■Nicole Johänntgen(as,ss,vo) Jon Hansen(tuba) David Stauffacher(per) Victor Hege(④⑤:sousaphone) 2022.9.20, Basel, Switzerland
■Selmabird Records SBR 026
ソロ・プロジェクトやセシリア・ノービーの女性バンド等で活躍の場を広げるサックス奏者の新展開
2019年の《Ystad Sweden Jazz Festival》で観た教会でのソロ・パフォーマンスが印象的だったヨハントゲン。本作は編成から考えれば、これまでに3タイトルを制作しているニューオリンズ由来のリーダー・ユニットHenryでの実績を踏まえた派生トリオのお披露目と言えそうだ。様々なタイプの自作曲が並ぶ中で、この組み合わせを選んだ理由を考えれば、バンドがより自由に音楽的な方向を変化させることが可能となるアドバンテージに思い至る。ソプラノ独奏&歌唱でソロの発展形を示す⑨と、自身のルーツを反映したバリエーションの⑩に、公私共に充実の今を聴く。(情報提供:Free Flying)
My Heart Speaks / Ivan Lins
■①Renata Maria ②The Heart Speaks (Antes e Depois) (English ver) ③Nao Ha Porque (There’s No Reason Why) ④I’m Not Alone (Anjo De Mim) (English ver) ⑤Congada Blues ⑥E Isso Acontece (This Happens) ⑦Easy Going ⑧Corpos (Bodies) ⑨Missing Miles ⑩Rio (Rio De Maio) (English ver) ⑪Nada Sem Voce (Nothing Without You)
■Ivan Lins(vo,key) Josh Nelson(p) Leo Amuedo(g) Carlitos Del Puerto(b) Mauricio Zottarelli(ds,per) Randy Brecker(⑨:tp) Dianne Reeves(②:vo) Tawanda(④:vo) Jane Monheit(⑩:vo) Kana Shimanuki(⑤:b-vo) The Tbilisi Symphony Orchestra, Kuno Schmid(arr) ©2023
■Resonance Records RCD-1040
現役MPBシンガー・ソングライターの最高峰が、著名ミュージシャンと91人編成の交響楽団を迎えた豪華版
キース、サンボーン、ガッドと同じ1945年生まれのリンスは、世界中で数多くのカヴァーが生まれている名作曲家であり、今作は超有名曲ではないレパートリーにスポットを当てたセルフ・カヴァーと英語ヴォーカル・ヴァージョンの収録が特色の一つ。リーヴスがハマり役を演じるバラード②、その魅力を広く知らしめるきっかけになりそうな新人タワンダの④、情感豊かなモンハイトの⑩と、ゲスト歌手が華やかさで貢献。リンスのスロー・スキャットにランディのミュート・トランペットが絡む⑨は、何とも贅沢。大ベテランの現役感溢れる充実の仕上がりだ。
Diatom Ribbons Live At the Village Vanguard / Kris Davis
■Disc-1: ①Alice in The Congo ②Nine Hats ③The Dancer ④VW ⑤Dolores, Take 1
■Disc-2: ①Bird Suite, Part 1: Kingfisher ②Endless Columns ③Bird Suite, Part 2: Bird Call Blues ④Bird Suite, Part 3: Parasitic Hunter ⑤Brainfeel ⑥Dolores, Take 2
■Kris Davis(p,prepared-p,arturia microfreak syn) Julian Lage(g) Trevor Dunn(b,el-b)
Terri Lyne Carrington(ds) Val Jeanty(turntables,electronics) 2022.5.27,28, NYC
■Pyroclastic Records PR28
NYの進歩派ピアニストによるプロジェクトの初ライヴ作
エスペランサ、トニー・マラビー、マーク・リーボウらが参加した2018年録音/2019年発表作『Diatom Ribbons』の方向性は、その後キャリントン、ジーンティとのトリオで継続。同作メンバーのダンに新顔のラージが加わったクインテットで、念願の“ヴィレッジ・ヴァンガード”6日間公演を実現した。ジャズ史に革新的な足跡を刻んだパーカー、ショーター、ドルフィー、ジェリ・アレン、サン・ラらを創作源とするサウンドは、デイヴィスの語彙とその応用が興味深い。
●アルバム試聴:
Arba / Itamar Borochov
■①Abraham ②Dirge ③Ya Sahbi ④What Broke You? ⑤Wabisabi ⑥Bayat Blues ⑦
Truth ⑧Who Shall Grant Me Flight ⑨Farewell
■Itamar Borochov(tp,vo,effects) Rob Clearfield(p,el-p,org) Rick Rosato(b) Jay Sawyer
(ds,per) Avri Borochov(③:oud) 2022.4.13,14, NY
■Greenleaf Music CDGRE1103
イスラエル出身のニューヨーカーが個性を強く打ち出した4枚目
デイヴ・ダグラスのレーベルに迎えられたことが多くを物語る。ヘブライ語で「4」を意味するタイトルの新作は、基本メンバーとワン・ホーンの編成はそのままに、ボロコフのルーツである中東音楽の旋法を音楽性の柱にしたサウンドを追求。60年代に生まれたモード・ジャズを吸収して、母国の先人を参照しつつ、モネット特製の微分音トランペットで奏でる繊細にして生命力に溢れるしなやかなメロディラインとヴォイスが、耳を捉えて離さない。作曲の才能も実感。
●アルバム試聴:
Conversation #10: Inland / Florian Arbenz
■①Jammin ②Sound ③Connecting ④Moon Song ⑤Freedom Jazz Dance ⑥Chant ⑦Fast Lane
■Martial In-Albon(tp,flh,sea shell) Nils Wogram(tb) Christy Doran(g) Rafael
Jerjen(b) Florian Arbenz(ds,per) Matthias Würsch(④:glass harmonica) (c) 2023
■Hammer Recordings KM231129
1975年生まれのスイス人ドラマーによる全12枚のシリーズ
古い友人や子供時代のヒーローを迎えた企画は、2021年からムタン、カンツィヒ、プシュニクらとの共演作を継続して、いよいよ終盤戦に突入。今回は欧州屈指の実力者ウォグラムと個性派ドランの参加で、期待が上昇。トロンボーン&ドラム・デュオの①を皮切りに、ギターが光る②を経てエディ・ハリスの⑤へ。グレッグ・オズビー(as,ss)らとのトリオ前作『#9』でも選んだこの曲を、やはりそれとはわからない形で進行し、アルベンツのドラムンベース・プレイで現代的に翻案するのがユニーク。
●アルバム試聴:
4 Wheel Drive II / Landgren, Wollny, Danielsson & Haffner
■①Chapter II ②Still Crazy After All These Years ③Hold On My Heart ④The Sound of Silence ⑤Just Another Minute ⑥Sunrise ⑦Spring Dance ⑧Fields of Gold ⑨April Rain ⑩Your Song ⑪The Wheelers
■Nils Landgren(tb,vo) Michael Wollny(p) Lars Danielsson(b,cello,g) Wolfgang Haffner (ds) 2023.4.17-19, 6.2, Gothenburg
ドイツACTの看板を背負う4人衆によるスタジオ録音第2弾
2019年のデビュー作がドイツのジャズ部門でベストセラーを記録し、同年に早くもライヴ作を発表。ACTが手塩にかけて育て、現在の地位を築いたヴォルニーと、ベテラン3人が同格のオールスターズとも見做せるカルテットが、カヴァー曲を中心にした前作とは趣を変えて、6曲をメンバーが提供。ジェネシス③、サイモン&ガーファンクル④、エルトン・ジョン⑩を好ましいジャズ・ヴァージョンに仕立てながら、ハフナー作⑨やダニエルソン作⑪で、メンバーのセンスとスキルが味わえるのが魅力。
Etching The Ether / Evan Parker Matthew Wright Trance Map+
■①At Altitude ②Drawing Breath ③Engaged in Seeking
■Evan Parker(ss) Matthew Wright(live electronics,sound design) Peter Evans(tp, piccolo-tp) Mark Nauseef(per) 2022.3.11, Faversham; 3.29, Hamburg
■Intakt CD 409
フリー系重鎮サックス奏者のエレクトロ・アコースティック・プロジェクト続編
2008年にライトと出会ったパーカーは、2011年にデュオ作『Trance Map』を発表。以降、随時メンバーが入れ替わる体制で活動を続けて、本作に至った。テクニック、エネルギー、スピードにおいて互角にアンサンブルを構築できるエヴァンスとの即興的な“シーツ・オブ・サウンド”に、ナウシーフのパーカッションを重ねてライトがデザインする音作りは、リアルタイムでの編集かと思わせるスリリングな展開があって、その手際にも感嘆。3曲は11~20分の長尺ながら、そう感じさせないほど濃密。